<多角化を進めるムハンマド皇太子と、軍主導の統治を続けるシシ大統領。統治哲学の違いが両国の断層を深めた。エジプトのジレンマとアラブ協調の綻びを読み解く>


▼目次
1.静かに広がる断層
2.アラブ協調の綻び、断層線はどこへ伸びるか

1.静かに広がる断層

中東を最も大きく揺さぶる亀裂は往々にして人知れず静かに広がってきた。エジプトとサウジアラビアの関係悪化はその一例だ。

中東・北アフリカの安定に重要な役割を担う2つの地域大国を引き裂くこの亀裂は、統治哲学の衝突に根差したもので、地域全体の分断を加速させかねない。

サウジアラビアの事実上の指導者、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は「ビジョン2030」を掲げ、石油依存からの脱却を目指して経済の多角化を進めようとしている。

一方、エジプトのアブデル・ファタハ・アル・シシ大統領は強権的な姿勢と軍による経済支配を変えようとしない。

シシが事実上のクーデターで実権を握った2013年から19年までにサウジアラビアは約250億ドルの対エジプト支援を行い、シシは「溺れる」自国を救ってくれたと感謝した。

だが今ではムハンマド皇太子は一向に改革を進めないシシに業を煮やしている。サウジアラビアは支援継続の条件としてエジプトに改革の実行を迫るようになった。

エジプトの脆弱な経済を支えるにはサウジアラビアの援助が不可欠だ。エジプト経済は国外で働く出稼ぎ労働者からの送金に大きく依存している。

エジプト人労働者の最大の受け入れ国はサウジアラビアだ。加えてサウジアラビアの多額の投資もエジプト経済の頼みの綱となっている。

にもかかわらず、今や両国は既成メディアやSNSで政府が陰で糸を引く口撃合戦を繰り広げている。

エジプトの情報当局と関係があるインフルエンサーはサウジアラビアの王族に激しい個人攻撃を行い、特に皇太子を口汚く罵っている。

対して皇太子と親しいとされるサウジアラビアのジャーナリストは、26年までにシシは失脚し、投獄される可能性があると主張。公然たる罵倒は両国関係が修復不能なまでに悪化していることを物語る。

2.アラブ協調の綻び、断層線はどこへ伸びるか

◇ ◇ ◇
記事の続きはメディアプラットフォーム「note」のニューズウィーク日本版公式アカウントで公開しています。

【note限定公開記事】なぜサウジとエジプトの関係は悪化したのか――サウジの「財布」に頼る危うさ


ニューズウィーク日本版「note」公式アカウント開設のお知らせ

公式サイトで日々公開している無料記事とは異なり、noteでは定期購読会員向けにより選び抜いた国際記事を安定して、継続的に届けていく仕組みを整えています。翻訳記事についても、速報性よりも「読んで深く理解できること」に重きを置いたラインナップを選定。一人でも多くの方に、時間をかけて読む価値のある国際情報を、信頼できる形でお届けしたいと考えています。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます