

だが10年代には、同誌周辺から日本人学者による論考の英訳ばかりか、思弁小説(スペキュレイティブ・フィクション)翻訳プロジェクトが立ち上がったのも、見逃せない。
前述のように、思弁小説は1960年代にSFの「新しい波」(ニューウェーブ)として勃興し、外宇宙(アウタースペース)ではなく内宇宙(インナースペース)の探求を目指す。
昨今では、相次いでイギリス最大の文学賞の翻訳部門、国際ブッカー賞の最終候補になった小川洋子の『密やかな結晶』や川上弘美の『大きな鳥にさらわれないよう』も、共にディストピア的思考実験を徹底した思弁小説の成果である。
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