さらに彼女は戦争以外での兵士の死亡率の分析にも着手していた。戦争以外のときに軍隊で生活する兵士の死亡率は、同年齢の一般男性の死亡率のほぼ倍である。そのことを次のような棒グラフで視覚化し、兵役中の生活環境が劣悪であることを示したのだ。

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また、20歳男子を毎年1万名徴兵して20年間兵役を課すと、実際の実働兵力は20万名ではなく14万2000名にしかならず、死亡や傷病により約29%を失っている。

こういったことを次のようにグラフ上の面積から示し、収集した確かなデータを視覚的に表して、「軍の宿舎や病院の環境を改善すべきだ」と彼女は主張した。

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そしてついに彼女の主張は政府に受け入れられ、軍の宿舎や病院の環境改善に着手することになった。さらに政府は医療統計に力を入れ、ナイチンゲールはイギリス統計学会の会員に選出された。

ナイチンゲールが信頼した「統計学」

ナイチンゲールによるデータの視覚化は、政府を動かすほどの効果があった。その一方で、批判も巻き起こした。

クリミア戦争の死亡率の例をとってみても、死亡率が下がったのは「病院の衛生状態の改善」だけではなく「寒い季節から暖かい季節への変動」や「感染症を媒介する蚊の減少」など、ほかの原因も考えられるという批判だ。

しかし、当時はその批判の妥当性を判断する統計学的手法が存在しなかった。

「神の考えを理解するには、統計学を」
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