ラクシュミナラヤナン氏はこの傾向を「創造性の喪失」ではなく、「心理的な適応」だと捉える。

「この流れには『憧れ』が作用しているんです。ミニマルな色使いは、高級感、洗練、普遍性を象徴するようになり、変化の激しい時代に人々が求める価値と一致しているんです」

デザイン大手リピンコットでコカ・コーラのリボンやスターバックスのロゴを手掛けたグローバル・クリエイティブディレクター、ブレンダン・マーフィー氏は、現代の「色の慎重主義」を、過去のカラフルな自己表現からの明確な転換と見ている。

「いまのインテリアはベージュの天然繊維、オフホワイトの壁、ステンレス製の家電、ガラスの保存容器が主流。かつては中流・労働階級が中心の時代において、色は『所有物の少なさ』を補っていた」とマーフィー氏は語る。

この「色の後退」は、経済的なシグナリングと大量消費の表れだという。

プレミアムブランドがミニマルなブランディングで「洗練」を打ち出し、廉価ブランドがそれに追随することで「憧れ」を演出した。その結果、ありとあらゆる製品の「凡庸化」が進んだ。

「もともとは差別化のための戦略が、最終的にはモノの世界全体を『退屈』にしてしまったんです」

「色なき時代」の理由とは
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