メルツは、ウクライナへの武器供与拡大やドイツの徴兵制復活を唱えてきた。最も注目すべきなのは、CDU・CSUとSPDが3月4日、ドイツ基本法(憲法)が定める「債務ブレーキ」の緩和で合意したことだ。連邦政府の財政赤字はGDP比で0.35%以内に抑えるよう定められているが、国防費のうちGDPの1%を超える分については規定の対象外にするという。

欧州委員会側は先日、EU加盟国の防衛費増額を可能にするため、今後4年間の財政ルール緩和を提案した。とはいえドイツはさらに踏み込み、EUの債務・財政赤字上限の徹底的見直しを呼びかけている。

経済と安全保障の課題に対応するには、ドイツは今後10年間に年間推定600億ドル相当を支出すべきだとされる。EU全体では短期的に、1年当たりの防衛支出を約2700億ドル増額する必要があるという。

この巨額投資の実現に向け、トリオは財政改革に乗り出している。成功すれば、EUの競争力が強化されるだけではない。従来、加盟国それぞれに任され、各国の財政事情がネックになってきた防衛・安全保障分野で、地域的な協力を促進できる。

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newsweekjp20250317040540-f2c3abe917143ce6da76deacb3a4fde0637fed8a.pngサイモン・トゥボー

SIMON TOUBEAU

英ノッティンガム大学准教授(政治・国際関係学)。ベルギー出身。専門は領土政治と連邦主義で、欧州諸国の政治を研究。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスや欧州政策研究センターなどで研究員を務めた。
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