それはスピリチュアルなものでもマッチョなものでもなくかなり泥臭いもの。私はこの本を読んで以来、とにかく全ての出会いは「新しい自分を知るチャンス」だと捉えるようになったし、あらゆる出来事も無駄ではないという考えを持つようになった。

本当にここまでガツガツしている人がいるのか、と日本の読者は疑問に思うかもしれない。

しかし、アメリカで「生き残っていく」には、確かにこのくらいの忍耐と特攻力と図太さが必要になってくる。

日本よりもはるかに「自分で成功をつかむ」必要がある(逆に言い換えれば、基本的には他者には頼れないし簡単には助けてもらえない)アメリカ社会では、待っているだけではチャンスはほぼ確実に訪れない。

今後の日本においても、未来への不確実さや将来への不安は増していく一方だろう。自己責任論やマッチョなストイックさをうたう自己啓発本も、その心理に漬け込むことでどんどん人気を得やすい状況になっている。

しかし本書が提示してくれるのは「自分だけがうまく行く方法」というよりも、不確実性さえも楽しみ、あえてその予測不可能な未来の中に可能性を見出す試行方法なのではないだろうか、と思う。

締めくくりで書かれている「この本で何より伝えたかったのは、快適な場所から離れ、失敗を恐れず、不可能だと決めつけることなく、あらゆる機会をとらえれば、可能性は無限に広がり、輝くことができる、ということでした」という言葉は、「正解」が決して一つではなく、臨機応変に未来に対応していく必要が求められている今の日本のあらゆる世代に、強く響く言葉なのではないだろうか。

竹田ダニエル(Daniel Takeda)

1997年生まれ、カリフォルニア州出身・在住。現在カリフォルニア大学バークレー校大学院在学中。「カルチャー ×アイデンティティ×社会」をテーマに執筆。「音楽と社会」を結びつける活動を行い、日本と海外のアーティストを繋げるエージェントとしても活躍。著書に『世界と私のA to Z』『#Z世代的価値観』『SNS時代のカルチャー革命』(すべて講談社)、『ニューワード ニューワールド 言葉をアップデートし、世界を再定義する』(集英社)など。

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