<菅政権が安倍前政権から継いだFOIP構想がどうなるかは、東京五輪と解散総選挙次第かもしれない>

安倍晋三前首相が2016年に提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想が脚光を浴びている。

インド洋と太平洋、アジアとアフリカを一体的に把握し自由貿易圏を確保しようとする壮大な図式は当初、麻生太郎外相(当時)が2006年に提唱した「自由と繁栄の弧」構想と同様に、理念先行の外交スローガンだと思われていた。

しかし、香港の民主派弾圧や新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(集団虐殺)疑惑、尖閣諸島周辺での中国海警船舶の領海侵入に象徴されるように、中国が近年、強権的国内統治と対外的覇権志向を隠そうともしなくなるにつれ、米中対立が激化している。

米中間の全面的軍事衝突はあり得ず、経済紛争こそが新時代の冷戦に当たるとみるか、米ソが繰り広げた激烈なイデオロギー闘争こそが冷戦であり、現在の米中関係は経済的な「権益対立」にすぎないとみるか、見解は分かれる。

だがどちらにせよ、日本が提唱したFOIPは米中対立の激化とシンクロすることで大言壮語性を脱し、日米豪印4カ国(クアッド)が戦略的提携関係を構築しようとする際の対中封じ込め安全保障戦略の座を獲得しつつある。

他方で、環太平洋諸国による自由貿易圏を創出するTPPは、米トランプ政権発足直後の離脱宣言に見舞われた。しかし日本は茂木敏充経済財政相(当時)のイニシアチブで巻き返しを図り、2018年末に米国抜きのTPP11(CPTPP)を発効させた。

現在、英国や台湾も加入する方向であり、2019年の日EU経済連携協定(EPA)と並んで、日本が独自の戦略外交で獲得した成果になっている。菅義偉政権はそうした外交環境の恩恵を前政権から受け継いだ。

今後、菅政権は東京五輪閉幕後に解散総選挙の洗礼を浴びることになる。

ワクチン接種の進展、五輪での日本選手の活躍、野党共闘の機能不全などが有利に働けば勝利する可能性がある。だがその場合でも、安倍退陣後の暫定政権性を拭い、自前の外交政策を展開できるかは不透明だ。

安倍政権は日米同盟重視を基本としながらも、中国を刺激する靖国参拝を7年近くも封印した。

経済的実利を重視する官邸主導の対中配慮政策を牽引してきたとされる今井尚哉元首相秘書官は去り、代わりに菅政権では秋葉剛男前外務事務次官を筆頭とする外務官僚の存在感が増した。秋葉氏はFOIP構想のシナリオライターとも目されており、菅政権が続投になった場合、対中封じ込めFOIP路線は踏襲されるだろう。

「二階降ろし」が活発化
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