<映画監督のオリバー・ストーンがロシアのプーチン大統領にインタビューした映像作品がウクライナ侵攻後、広く見られている。これはその書き起こし版だが、目立つのはやたらとストーンがプーチンに寄り添う危うい姿勢だ>

今回のダメ本

インタビューをどのようにアウトプットするか。相手の言い分に寄り添うだけなら、インタビュアーの仕事はほとんどのケースで意味を持たなくなる。言葉を引き出すのではなく、垂れ流すだけになるからだ。だからといって、厳しい言葉ばかりを投げ付ける見せ掛けだけの追及も意味がない。多くの場合、追及する側が自分の言葉に酔ってしまい、問題の本質から遠のいていく。インタビューは常にバランスの上に成り立ち、得た言葉を作品に落とし込む際にはさらに慎重なさじ加減が求められる。

本書では、著名な映画監督であるオリバー・ストーンがプーチンに試みたインタビューが一問一答形式で再現されている。生い立ちから始まり、大統領の座に就いてからの興味深い記述もある。

「ソ連崩壊にともなう最も重要な問題は、ソ連崩壊によって二五〇〇万人のロシア人が瞬きするほどのあいだに異国民となってしまったことだ。気がつけば別の国になっていた。これは二〇世紀最大の悲劇の一つだ」

「答えは非常に単純だ。この地域におけるアメリカの外交政策の基本は、ウクライナがロシアと協力するのを何としても阻止することだと私は確信している。両国の再接近を脅威ととらえているからだ」

いずれもプーチン自身の言葉だ。今回のウクライナ侵攻の背景を読み解く上でも極めて重要な視座を提供していること。これ自体は疑いようがない。だが、プーチンを相手にしたオリバー・ストーンは明らかにバランス感覚を失っている。

これは2015〜17年という時期に取材したことによる時代の制約があったからではない。ロシアはウクライナに攻め入っている。

理由は明白だ。彼はプーチンと自身の間にある共通点を見つけ出し、そこからプーチンという人間を理解しようと試みた。彼のアプローチそのものは良い悪いで判断するものではないが、今回は過剰な同調として作用してしまった。理解の鍵が、インタビュー冒頭のように家庭環境ならばまだ良かった。だが、インタビューを続けているうちに、オリバー・ストーンがアメリカの政治に向ける批判的な姿勢、イデオロギーとプーチンのアメリカへの猜疑心や恐怖心がきれいに重なってくる。結果的に20時間にわたる貴重なインタビューは、プーチンが見せたい「プーチン像」、プーチンが「アメリカに言いたいこと」を記録しただけ。そんな印象ばかりが残る1冊になった。

「あきれるほど寛容」という米メディアの酷評
【関連記事】