89年には、東ドイツの議会で演説し、「社会の在り方はその国の人々が決めるべきだ。そして、社会の在り方は多様であるべきだ」と述べた。この翌月、大勢の東ドイツ国民と西ドイツ国民が東西ベルリンを隔てていた「ベルリンの壁」を突き崩し、ソ連による東ヨーロッパ支配の終焉と東西ドイツの統一に道が開けた。

ゴルバチョフの悲劇は、自身が推進した改革によりソ連が崩壊し、自身も91年のクーデターにより権力の座を追われる結果になったことだ。大半のロシア人はソ連崩壊を招き、国のGDPを大幅に縮小させたことを理由に、ゴルバチョフの時代を「失敗」と見なしている。

しかし、45年続いた冷戦を終わらせ、東ヨーロッパの9300万人を解放し、14カ国の旧ソ連構成国の1億5200万人に独立をもたらしたのは、ゴルバチョフにほかならない。

現在のロシアは、KGB出身の独裁者ウラジーミル・プーチンの強権的支配の下にある。プーチンはゴルバチョフの政策を次々と廃止したが、プーチン統治下のロシアでも、多くの人は個人の自由が尊重される社会を望んでいる。

ゴルバチョフの遺産は、間違いなく残っている。

ニューズウィーク日本版 進化する世界の鉄道
2026年10月20日号(10月14日発売)は「進化する世界の鉄道」特集。

鉄道黄金期を迎えたヨーロッパを旅する――コリン・ジョイス(ジャーナリスト)/豪快かつ特異なアメリカ大陸鉄道史/膨張する中国鉄路の野望/「夢の超特急」リニアの現実/韓国、アフリカ、インド……世界を駆ける鉄道新事情

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます