自治権の拡大

一方、1982年以降、ミッテラン政権による地方分権化の方向の中で、民族主義の高まってきたコルシカには他の地域より広い分権化が進められ、文化政策や地域開発、鉄道整備などの分野で地元の権限が拡大されるなど、一定の地方自治が認められていった。

現在でもコルシカは他の地域とは異なり、州にあたるコルシカ地方自治体(Collectivité territoriale de Corse)の権限が強く、教育、放送、環境などの分野にまで、広く権限が認められるようになっている。また普通の州と異なり、コルシカ地方自治体の議会であるコルシカ議会の議長が執行部の長となるのではなく、それとは別に執行部とその長(首長)が議会によって選任され、執行部は議会に対して責任を負う(議会によって信任ないし不信任される)という特別の制度が取られている。

これに加え、さらに2018年1月1日から、コルシカ地方自治体と、それを構成する2つの県(オートコルス県とコルスデュスュド県)が合体して、単一の自治体、コルシカ自治体(Collectivité de Corse)が誕生することになっている。新しい単一の自治体は、それまでのコルシカ地方自治体と二つの県が持っていた権限と予算を統括的に行使し、行政機関とそのスタッフも集中的に管理・運用できるようになる。また、それに伴い、道路整備、土地整備、経済開発、社会事業などの分野でも権限が拡大され、自治権が強化される。

こうした自治権の拡大は、民族主義勢力が長年求めてきたものだ。しかし、これは簡単に実現できたものではない。過去、2003年に同様の制度改正が政府との間でまとまったものの、同年7月に行われたコルシカ住民投票で、51%の反対により葬り去られた経緯がある。このように、自治拡大の動きに対しては、島民は決して一枚岩ではない。元々の現地住民と、移住してきた新規住民(「大陸人」と呼ばれたり、フランス人と呼ばれたりして、島民やコルシカ人と区別される)との間には、越えがたい断絶がある。フランス世論研究所(IFOP)の調査によれば、元々の現地住民の割合(有権者ベース)はおよそ50%であるとされている。

こうした経緯を経てようやく実現した、今回の制度改正のもとで、新しい単一の自治体の議会を選出する選挙が、来る12月3日と10日に行われる。その結果改めて選任される新執行部は、それまで県と自治体に分散していた権限を統括的・集中的に行使し、新しく広がった分野での権限をも梃子にして、大きな影響力を持つことになる。

その選挙での勝利が有望視されているのが、民族主義勢力の「コルシカのために」である。短期的には、シメオニとタラマニが手を組んだことが大きいが、他の勢力が分裂・分散して、実質的な対抗勢力となりえていないことも、民族主義勢力にとってプラスとなっている。中期的には、バスチア市長選挙、コルシカ議会選挙、国民議会選挙など一連の選挙での勝利も、追い風となっている。

=====

民族主義勢力の台頭

こうした民族主義勢力が、政治的な動きを強め、力をつけてきたことの長期的要因としては、FLNCの武装闘争路線が失敗し、非合法活動路線から脱却したことが大きく関わっている。それまで民族主義勢力のなかに、非合法活動と連帯する動きがあり、そのことが穏健な民族主義勢力の団結や結集を妨げていた。しかし、FLNCが武力闘争路線からの脱却を宣言した以上、いまや、民族主義勢力の間で、連携をとり、協力していくことにあたっての障害はなくなったのである。FLNCの武装解除声明は、民族主義路線にとって、新たな支持者を調達する方向に寄与したと言える。

しかし、もしその民族主義勢力がこんどの選挙で敗れることになる場合、かれらの一部が「パリとその一味に勝利を奪い取られた」として、武装闘争路線に戻る可能性も、一部では囁かれている。FLNCから分裂し、分派として活動を続けている「10月22日のFLNC」は、今年9月末に声明を発表し、来る選挙で民族主義勢力が過半数を制するよう呼びかけるとともに、自治の拡大が実現できない場合には、「カタルーニャで起きたような住民の蜂起」が起きると警告した。

一方、民族主義勢力が勝利した場合には、新しい自治体の下で、強化された権限をフルに行使するだけでなく、さらに、自治拡大の要求を強めていくことになるだろう。それが独立要求というところまでいくかどうかは、今の時点では見えていない。少なくとも、「コルシカのために」は、公約に独立までは掲げていない。

自治派のシメオニは「独立は我々のプログラムにはない」と言い切っている。ただし、自治権の拡大の延長として、コルシカ語の公用語化、完全な自治権を有するコルシカの特別の地位の承認、コルシカ民族の承認などを、要求している。しかしそれは、フランスを「一つにして不可分の共和国」とし、公用語をフランス語と定めるフランス共和国憲法に違反するため、憲法改正が必要となり、ハードルは高い。

独立派のタラモニも、「任期の間に果たし得る公約として、独立は主題になり得ない」としているが、独立が最終的な政治目標であることは隠さない。自身のアイデンティティに関し、「私はまずコルシカ人だと感じる。フランス人だとは感じない。しかし、反フランスでもない」と述べたり、あるインタビューで「わが『友好国』であるフランス」と発言したりしている。

この二人のいずれが主導権を握っていくのかによって、今後の流れも変わってこよう。今のところ、自治派のシメオニのほうが支持者も多く、優勢と見られる。そのシメオニは、「コルシカはカタルーニャとは違う」として、カタルーニャの独立騒動とは一線を画す姿勢を示している。