アラブ諸国の研究者たちは、独裁政権のもとで、長らく自国政府の御用学者を強いられてきた。それに反発した若手研究者たちは、欧米に留学し欧米の研究機関で活躍の場を見出した。だが、彼らは今、欧米のカネと政策に従属して物事を単純化してしか分析できない、「わかりやすさ第一」の研究には甘んじたくない、と主張し始めている。自国であれ、欧米であれ、政府や流行の学問の言うままにはならないぞ、と胸を張る。

反政府デモが続くレバノンで、一年前のデモ発生時にデモ隊が活動拠点にしたのが、「卵」と呼ばれる現代建築内部の空きスペースだった。そこでは、知識人、芸術家、学者などが自発的に討論会や講演会を開催し、デモ隊の間で知識を高めあった。同じ時期に首都中心で座り込み運動が続いたイラクでも、各大学がそれぞれ広場にテントを張って、積極的に反政府抗議活動の核を形成した。そこでは知識人の役割は、政府にも外国にもおもねることなく、人々の自立への模索を支えるものとして機能している。それこそが、「研究」の一番の存在意義だ。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 進化する世界の鉄道
2026年10月20日号(10月14日発売)は「進化する世界の鉄道」特集。

鉄道黄金期を迎えたヨーロッパを旅する――コリン・ジョイス(ジャーナリスト)/豪快かつ特異なアメリカ大陸鉄道史/膨張する中国鉄路の野望/「夢の超特急」リニアの現実/韓国、アフリカ、インド……世界を駆ける鉄道新事情

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます