片側二車線の道路で、ほとんどの人が車線を無視して走るから、片側三車線になったり、四車線になったり。おかげであちこち渋滞が発生するし、交通事故も頻発する。わたしがエジプトに住んでいたのは20年近く前だったのだが、ちょうどそのころ、シートベルトが義務化され、着用しないと罰金が科されるようになっていた。しかし、当時はタクシーがほとんど数十年前の骨董品ばかりで、シートベルトが千切れていたり、そもそもついていなかったり。じゃあ、どうするのかというと、お腹のうえに、そのシートベルトの残骸を置いておくのである。危険防止の観点からすれば、まったく意味をなさないのだが、エジプトではそれで合法になったらしい。
今は状況が改善されたんだろうか。エジプトを主フィールドとする研究者が、こういうのを無秩序のなかの秩序というのだと主張していたが、慧眼であろう。
エジプト人の名誉のためにいっておくが、エジプトの交通事情だけがひどいわけではない。筆者が中東に住んでいた20年以上昔でいえば、イエメンもレバノンもひどかった。また、まえにサウジアラビアの暴走族の話でも紹介したとおり、サウジ人の運転の無茶っぷりも負けてはいない。
信仰は信仰、文化は文化、娯楽は娯楽
さて、イランである。なぜ、イラン人に信仰がないというコトバを思い出したかといえば、7月にヒジャーブ(ペルシア語だとヘジャーブ)をかぶらずにダンスを踊った動画をSNSに投稿したとして18歳のイラン人女性マーエデ・ホジャブリーがイラン当局によって逮捕されるという事件が起きたからだ。
彼女のインスタグラム(@maedehhojabri ※現在は非公開設定になっている)の投稿をみてみると、ダンスやファッション自体が非常にセクシーで、イスラーム共和国の基準からいえば、たとえヒジャーブをかぶっていたとしてもたぶんアウトであったろう。
イランでは公共の場でのダンス自体が規制の対象だといわれている。そういえば、米国のファレル・ウィリアムズの「Happy」が数年前、大ヒットしたとき、イランでも多くの女性たちがSNS上でHappyを踊るビデオを投稿し、今回と同様逮捕者が出ていた。
ただ、少なくとも革命前のイランでは民族や男女別、またさまざまな機会ごとにたくさんの種類のダンスが踊られており、ダンスが生活や文化の一部であったことは忘れてならない。実際、ホジャブリーが逮捕されたのち、彼女への連帯を示すため、女性を含む多くのイラン人たちが「ダンスは犯罪ではない」とのスローガンをかかげ街頭で踊ったり、SNS上で#DancingIsNotACrimeのハッシュタグをつけた動画を多数投稿したりした。