日本の6割ほどしかない国土に6つの共和国(と2つの自治州)、イスラーム・カトリック・東方正教会という3つの宗教があり、多数の民族をもつ。さらに、オスマン帝国およびオーストリア=ハンガリー帝国という超大国の圧力に左右されていた。

オスマン帝国支配下では、各民族は宗教ごとに一定程度の自治を許され(ミッレト制)、一定程度の安定を維持しており、共産主義時代にはチトー大統領のカリスマ性で、宗教や民族の対立は抑え込まれていたが、それらの箍(たが)が外れると、ユーゴスラビアは一気に渾沌化していったのである。

西欧諸国に多数のムスリムが含まれるようになったのには、彼らの植民地主義や経済的な豊かさが影響しているが、ムスリム国と国境を接しているクロアチアやセルビア代表にムスリム選手がほとんどいないのは、こうした歴史的な複雑さが影響しているのであろう。

そういえば、『ドリナの橋』でイスラーム世界とキリスト教世界の共存と対立を描いたアンドリッチ自身は、ボスニアでクロアチア人の両親のもとに生まれたにもかかわらず、セルビア人寄りの立場をとったため、ボスニアでもクロアチアでも批判の対象になっていた。

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