コラム

植物で「より母乳に近い粉ミルク」の大量生産が可能に? 新たなHMO生産法が大人にも「朗報」なワケ

2024年06月21日(金)21時15分

さらに研究チームが生産コストを計算したところ、工業規模の大量生産では、植物からHMOを作ると現在の主流である大腸菌を用いる方法よりも安価になる可能性が高いことが示唆されました。大腸菌の場合は、副産物を取り除く課程にコストがかかるからだそうです。

シー博士は「さらに研究が進み、すべてのHMO母乳オリゴ糖を 1 つの植物で作れるようになったら、植物を粉砕してすべてを同時に抽出し、それを直接、粉ミルクに加えることができます」と目標を語ります。

最近は、HMOは乳児の栄養分として大切なだけではなく、「プレバイオティクス」であることも注目を集めています。プレバイオティクスとは、ビフィズス菌などの有用菌(プロバイオティクス)のエサとなる物質で、食物繊維やオリゴ糖がこれにあたります。

腸内フローラ(細菌叢)は近年、腸内環境を整えるだけでなく、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、免疫調節機能、脳の認知機能やうつ病の発症などにも関与していることが研究で示されています。つまり、HMOが大量生産できると、大人のための機能性食品やサプリとしても役立つ可能性があるということです。

今回はアメリカ発のHMO作成の新技術を紹介しましたが、日本は以前からHMOの製造や利用、応用に関する研究で世界をリードしています。赤ちゃんの成長や大人の健康のために、ぜひ、早期の製品化を目指してほしいですね。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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