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事故

配達ライダーを飲み込んだ深さ20メートルの穴 日本の技術も止められない韓国ソウルの道路崩壊

2026年1月28日(水)14時20分
佐々木和義

急速な都市開発が生んだ「時限爆弾」

ソウル市は500メートル前後の山々や丘陵に囲まれた盆地構造の地形であり、市街地にもアップダウンが多い。また、1960年代からの急速な経済成長に伴って都市開発が進められ、1974年に地下鉄1号線が開業して以降、次々と地下鉄網が整備された。こうした短期間での大規模な地下工事や上下水道の敷設により、道路の下は複雑な空洞が生じやすい構造となっており、これがシンクホール発生の一因となっている。

ソウル市がシンクホール対策に本腰を入れたのは2014年からである。同年7月17日に汝矣島(ヨイド)の国会議事堂前道路で深さ1.5メートルのシンクホールが発生、翌18日には延世大学の構内道路で3平方メートル、深さ40センチの穴ができた。さらに翌日の19日にはふたたび国会前道路で3メートルのシンクホールが発生した。24日にはソウルに隣接する議政府市新谷洞(ウィジョンブシ・シンゴクトン)のマンション団地で深さ2メートルの穴が開いて通行していた女性が負傷した。

そして同年8月5日、松坡区蚕室洞(ソンパク・チャムシルドン)の石村(ソクチョン)駅付近で爆発音とともに穴が開く事故が発生した。現場では第2ロッテワールドの建設工事と地下鉄9号線の掘削作業が行われており、いずれかあるいは2つの工事が複合して事故が発生したと推定されたが、市の調査委員会は地下鉄工事を行なっていたサムスン物産の施工不良と結論づけた。

調査委員会はサムスン物産が行なっていたシールド工法では地盤の状態を見ることができず、サムスン物産が土砂量管理を正しく行わなかったと判断したのだ。サムスン物産が工事を始めた前年5月以降、掘りおこした土は当初予測した掘削量(2万3842立方メートル)より14%多い2万7159立方メートルで、軟弱地盤の沖積層ということを知りながら地盤補強の施工が不十分だったと説明した。

人的被害がなかったとはいえ、発生したシンクホールは7つにのぼり、近隣にある5階建て集合住宅の片側が30cm沈んだほか、5棟の建物が傾いて壁に亀裂が入るといった被害が起きており、地下鉄工事そのものが原因なら発注した市も責任を免れない。サムスン物産が「掘削量は適正管理範囲内と考えた」としながらも調査委の判断を受け入れると地下鉄当局とロッテは胸を撫で下ろした。

調査委は石村陥没事故を地下鉄工事が原因と結論づけたが、水道管が原因と見られる事故は2010年の435件から13年には854件へと倍増。14年は7月時点で568件に達していた。このため、遅きに失したものの、ソウル市はシンクホール対策に本腰を入れ始めた。

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