高市首相が打つ「冒頭解散」という勝負手...「喧嘩上等」首相は「三重冷戦」を生き残れるのか

A BUTTERFLY EFFECT

2026年1月28日(水)16時50分
北島 純 (社会構想大学院大学教授)

「仁義なき世界」を生き抜く

この傍若無人な手法に国際社会は震撼した。しかし、世界は既に「法執行の域外執行」が多重化した状態に入っている。中国政府が日本を含めた国外で中国人を取り締まるための秘密警察拠点を運用していたのも「中国法の域外執行」だ。ロシアのプーチン政権は、ロシア系住民保護のための特別軍事作戦と称してウクライナに侵攻した。大国が自国の覇権と権益確保を国際法秩序に優越させる潮流が再び世界を覆いつつある。

トランプ大統領が12月に発表した国家安全保障戦略(NSS)で示したトランプ版モンロー主義(ドンロー・ドクトリン)は「西半球の覇権をアメリカが握り、中ロには口出しさせない」とするが、これが「東半球の覇権は求めない」ことと表裏一体であるとするならば、特別軍事作戦(台湾有事)あるいは「中国法の域外執行」としての台湾併合(自治区化)が強行されても、アメリカは沈黙し、追認するかもしれない。


元大統領補佐官で米保守派の重鎮パット・ブキャナンがかつて主張していた「日韓からの米軍撤退」という「悪夢」が現実化する可能性は、北朝鮮の核兵器開発が進む現状では高いとは言えない。しかし「ネバー・セイ・ネバー」(絶対に起こらないとは言えない)というリスク管理の原則からすると、日中対立が激化してもアメリカが日本に肩入れしない事態を想定せざるを得ない。

衆議院で可及的速やかに単独過半数、できれば安定多数を確保し政権基盤を強化。有事対応の予算編成と、対中抑止となる強靭な安全保障体制の構築・インテリジェンス関連の法整備を急がないと間に合わない──。このような分析が、高市首相の決断を後押ししたのではないか。

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