最新記事
ヘルス

大流行中の「奇跡のダイエット薬」オゼンピック、「鬱や自殺願望」などを引き起こすリスクを新研究が警告

‘Deadly Risk’ of Fat-Loss Drugs

2024年4月12日(金)17時18分
パンドラ・デワン(本誌サイエンス担当)
やせ薬として人気のオゼンピック

HALFPOINT/ISTOCK

<体重減少効果が話題の糖尿病治療薬オゼンピック。鬱などの精神科的「有害事象」を引き起こす可能性が、新たな研究で明らかに>

「脂肪を溶かす奇跡の薬」オゼンピックに、科学者らが警告を発している。頻度はまれだが、命に関わりかねない精神症状との関連を示す研究結果が出ているという。

オゼンピックはインスリン非依存型(2型)糖尿病治療薬として開発された皮下注射型の処方薬で、血糖値を下げる効果がある。それが大人気になっているのは、ある副作用のおかげ。体重減少効果だ。

オゼンピックは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬だ。GLP-1は消化管ホルモンで、食欲や血糖値上昇を抑制する上で重要な役割を果たす。

オゼンピックの成分であるセマグルチドは、GLP-1の作用を模倣して受容体に結合する。それによって、胃の内容物の排出を遅らせて満腹感をもたらし、空腹を感じにくくするため、食べすぎを防ぐことができる。

オゼンピックの姉妹薬で、米食品医薬品局(FDA)が肥満症治療薬として承認した注射剤、ウゴービの有効成分もセマグルチドだ。米ヘルスケアデータ分析企業トリリアント・ヘルスによれば、アメリカでは2020年初めから22年末までに、セマグルチド製剤をはじめとするGLP-1受容体作動薬の処方数が300%増加した。

この「やせ薬」は登場以来、セレブやインフルエンサーに支持され、TikTok(ティックトック)ではハッシュタグ「#ozempic」の再生回数が14億回を超える。

ところが、体重減少目的で使用した場合、セマグルチド製剤には歓迎できない副作用があることが判明している。

副作用に関する研究の大半は消化器系の問題に焦点を当てている。だが医学誌「国際臨床薬学ジャーナル」に発表された新たな研究では、鬱や不安、自殺願望などの精神科的有害事象との気になる関連が浮かび上がった。

「私たちの研究結果は、新たな抗肥満薬が精神衛生上の問題と関連する可能性を浮き彫りにした。医療関係者と患者の双方にとって、非常に重要な意味があると考えている」。論文の筆頭著者で、ジッダ大学(サウジアラビア)臨床薬理学准教授のマンスール・トベイキは本誌にそう語った。

「これらの新薬は、最も一般的に使用される医薬品の1つになっている。私たちの研究が報告した有害事象例は、処方前に患者の精神衛生状態を慎重に評価する必要があると医師に注意喚起するものだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米フォード、スペイン工場で最大1600人の追加削減

ワールド

香港中銀、政策金利を据え置き 米FRBに追随

ビジネス

米運輸当局、ウェイモの無人タクシー調査で追加情報を

ビジネス

テスラ株主、560億ドル報酬案を承認へ マスクCE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「勝手にやせていく体」をつくる方法

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 5

    謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わな…

  • 6

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 7

    バイデン放蕩息子の「ウクライナ」「麻薬」「脱税」…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 9

    たった1日10分の筋トレが人生を変える...大人になっ…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 10

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 10

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中