最新記事

国葬

安倍氏国葬に国内外4300人参列、割れる賛否 岸田首相、弔問外交をアピール

2022年9月27日(火)17時30分

臨時国会で説明責任

安倍元首相は7月8日、参議院選挙の応援に駆けつけた奈良市で銃撃され、死亡した。逮捕された容疑者が動機として旧統一教会と母親の関係を挙げ、それをきっかけに安倍氏をはじめ自民党の議員が協会と接点があったことが次々と表面化。国葬反対の世論が強まるとともに、岸田内閣の支持率も低下した。

法政大学の白鳥浩教授(現代政治分析)は、臨時国会で2つの説明責任を果たすことが短期的な岸田政権の課題だと指摘。「1つは国葬の費用、2つめは国葬の法的な手続き上の位置づけ。自民党が統一教会と関係を絶つとは具体的に何をすることかについても説明が必要だ」と語る。

報道各社が9月中旬に実施した世論調査によると、政権支持率は軒並み急落。毎日新聞の調査では36%から29%に低下し、初めて30%を割り込んだ。日本経済新聞は14ポイント減の43%、共同通通信は13.9ポイント減の40.2%だった。最も厳しい結果となった毎日新聞の調査によると、旧統一教会を巡る対応を評価しないは72%、国葬に反対は62%だった。

国葬前日の26日に日本武道館近くにいた38歳の女性会社員は「(国葬は)すべきではないと思う。税金で行うということには疑問がある」と語った。一方、28歳の男性は「あす実家に帰るので、長年総理として務めた安倍晋三さんを追悼したいと思ってきょう来た」と話した。

集団的自衛権で国論を二分

安倍氏は2006年9月から1年間首相を務め、体調不良を理由に退任。12年12月に再登板し、20年8月に体調不良で辞めるまで歴代最長の7年8カ月在任した。

第2次安倍政権は看板政策「アベノミクス」を掲げてデフレからの脱却を目指し、日銀の大規模緩和で円安と株高を演出した。国論を二分する中で集団的自衛権の行使を可能にしたほか、「地球儀を俯瞰する外交」を掲げ、米国以外にもインドやオーストラリア、英国などとの関係強化に動いた。

国葬は約16億6000万円という費用も批判されている。岸田首相は「弔問外交」という成果を強調する考えで、26日から28日にかけて来日した要人と30以上の個別会談をこなす。

26日午後には米ハリス副大統領と会い、台湾情勢や日本の防衛力強化などを協議。27日午前にはオーストラリアのアルバニージー首相やインドのモディ首相と会談し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて連携することを確認した。

(杉山健太郎、竹本能文 編集:石田仁志、久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑

ワールド

サウジ6月原油販売価格、大半の地域で上昇 アジア5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中