最新記事

宇宙

超大質量ブラックホールが3年以内に大規模な衝突を起こすおそれ

2022年9月30日(金)18時24分
松岡由希子

ブラックホール合体のシミュレーション NASA Goddard

<12億光年先の銀河の中心にある太陽の約2億倍の質量を持つ超大質量ブラックホール連星(SMBHB)が大規模な衝突へと向かっているかもしれない、という研究が報告された......>

地球からおよそ12億光年先の銀河「SDSS J1430+2303」の中心から放たれている光のゆらぎは、太陽の約2億倍の質量を持つ超大質量ブラックホール連星(SMBHB)が大規模な衝突へと向かっている兆候なのかもしれない。もしこれが事実であるとすれば、この超大質量ブラックホール連星が3年以内に合体する可能性があるという。

活動銀河核の周期がどんどん短くなった

中国科学技術大学らの研究チームは、2022年1月に発表した研究論文で、「SDSS J1430+2303」の活動銀河核(AGN:ブラックホールの周りが明るく光っている天体)の周期が3年のうちにどんどん短くなり、1年から1カ月へと大幅に短縮されているという奇妙な現象を報告した。

研究チームはさらにその原因を解明するべく、「スイフト」、「XMM-ニュートン」、「チャンドラ」、「ニュースター」の4つのX線望遠鏡による2021年11月23日から2022年6月4日までの「SDSS J1430+2303」の観測データを分析し、衝突に向かう超大質量ブラックホール連星にみられる高エネルギーの特徴をつかもうと試みた。その研究成果は学術雑誌「アストロノミー・アンド・アストロフィジックス」で掲載される予定だ。

ブラックホール連星と確認できているわけではないが

「arXiv」で公開された査読前論文によると、この銀河から放射されるX線で変動がみられ、その変動は最大で7倍にものぼった。また、ブラックホールに落ち込む鉄と関連する「Fe-Kα輝線」の放射が「XMM-ニュートン」と「チャンドラ」の観測で99.96%の信頼度で検出された。

このような放射は超大質量ブラックホール連星と関連している可能性があるものの、超大質量ブラックホール連星であることを裏付ける決定的な特徴をとらえるまでには至っていない。研究チームは2022年2月下旬から3月初旬にも超長基線電波干渉計で「SDSS J1430+2303」を観測しているが、決定的な成果は得られなかった。

超大質量ブラックホールがどのように巨大化するのかはよくわかっていないが、そのメカニズムの一つが連星の合体と考えられており、この爆発によって得られるデータは、超大質量ブラックホールがどのように巨大化するかについて多くを教えてくれる可能性がある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中