最新記事

少数民族

中国の弾圧で人権を踏みにじられるウイグル女性たち 悲惨な虐待の実態と、必死の抵抗

UIGHUR WOMEN AT THE FORE

2021年4月13日(火)14時47分
シミナ・ミストレアヌ(フリーランスジャーナリスト)

でも負けてはいない。アサトによると「生き延びた人や彼らの支援者が、愛する人のために声を上げている。それは自分と自分の肉体の自主性に対する国家テロに屈することなく、社会における自分自身の力と立場と声を取り戻そうとするパワフルな女性たちの物語」なのだ。

犠牲者自らが働き掛ける

女性たちは政府によって虐げられたが、その苦しみを超越して闘い始めた。中国政府による弾圧と新疆の危機的状況の中で最大の犠牲者にされながら、同時にこの2つの問題について国際社会の理解を形成するための運動の先頭に立っている。

その1人、米テネシー州メンフィスで小学校の教師として働いていたギュルルイ・アスカルが新疆にいる親族の身柄拘束を知ったのは16年11月のことだ。ウイグル自治区の区都ウルムチに暮らす甥のエクラム・ヤルムヘメドから借りていた約1万ドルを返済するために彼に送金したら、その直後に彼は連行され、数カ月後には彼の兄弟も身柄を拘束された。

210406p18_UGL_03.jpg

新疆で暮らす親族を心配する教師のギュルルイ・アスカル ASGAR'S DAUGHTER FOR FOREIGN POLICY


アスカルは甥2人の失踪をアメリカで公にしようと思った。同じ頃、義理の兄弟も身柄を拘束されていた。だが現地で暮らす母親とネット経由で話すと、余計なことはするな、黙っていろと言われた。

「私たちウイグル人は、いわば無力感を教え込まれている」とアスカルは言う。何十年も平和的な抗議活動を続けてきたけれど、何度も暴力的につぶされてきた。だからウイグル人の親は今、もう何もするなと子に教えるようになっている。

だからアスカルも黙ることにしたが、それが身体的なストレスとなった。眠れなくなり、ストレス性胃炎に悩まされた。18年4月には母とも連絡が取れなくなった。パソコンからスカイプで呼び出しても応答がない。高名な言語学者の兄も19年1月に身柄を拘束された。やがて親しい親戚がメッセージアプリのウィーチャットで伝えてきた。「親族の男はみんな連れて行かれた」

だがアスカルは絶望の底にいたとき、09年7月のウルムチ騒乱に際して立ち上がった女性たちの例を思い出したという。「あの救い難い状況の中でも、あの人たちは立派に立ち向かい、教えてくれた。弾圧あるところに抵抗ありなのだと」

そこで彼女は、もう黙っていられないと夫に告げた。「もう目を覚まさないといけない。協力してくれるジャーナリストを探そう」

報道から始まった支援

最初に接触したのはワシントンにいるラジオ・フリー・アジア(RFA)の記者グルチェフラ・ホジャ。ホジャもウイグル人で、新疆での弾圧初期から報道に携わっていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:中国、サービス消費喚起へ新政策 カギは所得増

ビジネス

NY外為市場=米当局がレートチェック、155.66

ビジネス

米国株式市場=ダウ下落・S&P横ばい、インテル業績

ワールド

米ロ・ウクライナ三者協議、初日終了 ドンバス領土問
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 5
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 8
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 9
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 10
    3年以内に日本からインドカレー店が消えるかも...日…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中