最新記事

都市開発

リアル世界に生まれるフェイスブックの共同体

2017年8月19日(土)15時15分
ウィル・オリマス

格差の解消は足元から

今回の計画は地元に、もう1つ大きな影響を与えるだろう。この地域には、サンフランシスコ半島と対岸地域を結ぶ古い鉄道を再建する計画が以前からあるが、すぐには実現しそうもない。

フェイスブックはこのルートに関心を示し、100万ドルを投資して新しいバス路線を設けるなど、鉄道に代わる交通手段の可能性を探っている。サンフランシスコ湾沿いのフェイスブック本社は、便利な乗り換えターミナルから離れているからだ。

これはフェイスブックだけの問題ではない。半島地域はハイテク企業の雇用が多いが、住宅や交通インフラは不足している。その結果、家賃は跳ね上がる。人々は家賃の安い遠くの住宅地から通勤するので、道路は渋滞し、大気汚染も深刻だ。

都会に住みたがる人が増え、車離れの傾向が広がる今、こうしたカンパニータウンの計画が増えればいいのではないか。従業員の福祉にもつながり、周辺地域の発展も促す。

【参考記事】AIの思考回路はブラックボックス

フェイスブックの村が、メンローパークやパロアルトといった地域の中でも特に不便なベルヘイブン地区などとつながれば、地元に歓迎されるだろう。ハイテク産業の発展が地域にもたらした格差拡大の解消につながることが期待できるからだ。

新しいコミュニティーを形成して、格差をなくそうとフェイスブックが本気で考えているのなら、まずは足元から始めるべきだ。

新しい住宅地が近くにできるのは嫌だという人たちもいるかもしれない。だが自治体が味方すべきはむしろ、フェイスブックの取り組みのほうだろう。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

© 2017, Slate

[2017年8月22日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中