最新記事

米ロ関係

初顔合わせの米ロ首脳会談、結果はプーチンの圧勝

2017年7月13日(木)10時10分
フレッド・カプラン(スレート誌コラム二スト)

首脳会談で大物感を印象付けたプーチン(左)。握手の手を差し出したのはトランプのほうだった Carlos Barria-REUTERS

<トランプは懸念された失言や失敗こそなかったが、ロシアの大統領選介入疑惑は事実上「不問」に>

今月、G20首脳会議に合わせてドイツのハンブルクで初の首脳会談をした際、トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が何を話したのか、正確なことは永遠に謎のままになるかもしれない。

両首脳ともそれぞれの思惑があるし、アメリカのティラーソン国務長官はいつも多くを語らず、ロシアのラブロフ外相の言葉も当てにならない。公式の記録係は同席しておらず、通訳者のメモが流出することもまずあり得ない。

それでも、ここまでの報道からいくつか言えることがある。最も重要なのは、首脳会談がプーチンにとって大成功だったということだ。

ティラーソンは首脳会談後の記者会見で、トランプがロシアの米大統領選介入疑惑に複数回言及したと述べた。しかし、ラブロフによれば、プーチンは疑惑を否定し、トランプもその説明を受け入れたという。

ラブロフが誇張して話している面はあるだろう。それでも、両首脳が「過去のことを蒸し返す」のではなく「前に進む」ことで合意したと、ティラーソンも述べている。要するに、プーチンは、アメリカの民主主義に対して情報戦争を仕掛けておきながら、その代償を支払わずに済むことになったのだ。

【参考記事】G20で孤立したのはトランプだけでなくアメリカ全体

トランプにしては上々?

約2時間15分の首脳会談で多くの時間が割かれたのは、シリア問題だった。両首脳は、シリア南西部の停戦に合意した。この停戦が持続すれば確かに意義は大きいが、ティラーソンも認めているように、細部の詰めはまだこれからだ。

ウクライナ問題も話題に上りはしたものの、両国がウクライナ問題担当の特別代表を選任することで合意した以外はほとんど進展がなかったようだ。対ロ制裁やクリミアの帰属、ウクライナ東部からのロシア軍の撤退時期といった問題が話し合われたかは、ティラーソンもラブロフも一切言及していない。

米ロ関係が緊張状態にあることを考えれば、このくらい冷静な話し合いができれば上出来だったという見方もできるだろう。だが、今回の会談でトランプよりプーチンのほうが目的を達したことは間違いない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中