最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

非難合戦となった大統領選、共和党キーマンのペンスの役割とは

2016年10月11日(火)14時50分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

 2つ目は、共和党内が内紛に陥るという可能性だ。今日現在のアメリカの各メディアは、トランプの過去の失言・放言を、目を皿のようにして探している。結果として、もっとヒドい内容が出たりすると、議会の候補たちは耐えられなくなって、さらにトランプへの不支持が出てくるかもしれない。その場合は、多くの党員がトランプを見放す中で、ペンスが共和党の議員や知事候補の「応援団長」を務めることになるだろう。

 3つ目は、投票1カ月前を切ったこれからの「どこかの時点」で、トランプが放り出す、つまり「降りてしまう」というシナリオだ。投票用紙は印刷済みなので、テクニカルには混乱する。しかしその場合にはペンスを大統領候補として戦う可能性も取り沙汰されている。冷静に考えると、知名度でハンデはあるが、ここ数週間のヒラリーの低調ぶりを考えると、ペンスの方が善戦する可能性も「無きにしも非ず」ということで、このシナリオはまったく排除もできない。

【参考記事】選挙ボランティアから見える、大統領選「地上戦」の現状

 そう考えると、ペンスの10日のCNNでの発言には思い当たるフシがある。「戦線離脱?」を問われたペンスは「今回、共和党から副大統領候補指名を受けたのは、自分の生涯の中でも最高の栄誉」だから辞退はしないと説明したのだ。

 あくまで自分は「共和党の副大統領候補」であり、「トランプの副大統領候補」という言い方はしなかった。つまり仮にトランプが降りた場合、自分が担がれることを「ほんの少しだけ」意識しているように感じられるのだ。それはともかく、1つ目や2つ目のシナリオ、つまりこのまま敗北という場合でも、自分としては共和党の本流として、トランプの発言には是々非々を貫きながら、一人でも多くの議会や知事の候補を「救う」ことを考えているのではないか、そのように考えられる。

 大統領選最終盤で情勢がここまで流動化してくると、ペンスの言動から目が離せない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中