最新記事

エネルギー

中国が突き進む原発大国への道

福島の事故を受けて中断されていた原発推進計画が、ここにきて再び加速している

2014年3月13日(木)16時48分
M・ロチャン

建設ラッシュ 中国各地で原子炉の新規建設が相次ぐ見込み(浙江省の秦山原子力発電所) Reinhard Krause-Reuters

 中国各地で原子炉の新設を進め、2020年までに原子力による発電能力を58ギガワットに引き上げる──東日本大震災の福島第一原発事故でいったんペースダウンしていた中国の原発推進計画が、ここにきて再び勢いづいている。

 国有の原子力企業、中国核工業集団公司(CNNC)の孫勤(スン・チン)会長によれば、今後数カ月のうちに原子炉新設の承認手続きが加速するとみられ、20年までに20基、あるいはそれ以上が新たに建設される見込みだという。

 中国政府が進めるクリーンエネルギーへの移行計画も、原子力の民間利用を劇的に拡大する原動力になっている。中国には現在、原子炉が17基あるが、そこで生み出される電力は全体の2%以下。CNNCは浙江省の三門原子力発電所で2基の原子炉の建設を進めており、来年には稼働できる見込みだという。東芝傘下の米ウェスティングハウス・エレクトリック社が開発した新型原子炉AP1000が採用されており、高い発電性能が期待できる。

 2010年に工事が始まったものの、福島原発事故を受けて中断されていた海南島の原発建設についても、CNNCは工事再開の準備を進めている。ただし、当局の承認を得るのに2,3年かかる見込みだと孫は語っている。

 中国政府は11〜15年の5カ年計画の期間中に4〜6基、続く15〜20年の新5カ年計画でさらに6〜8基の新設を承認するとみられる。「非化石エネルギーの割合を2020年までに15%に引き上げるという政府の目標を達成するうえで、原発は重要な役割を担うだろう」と、孫は語る。CNNCは新株発行で30億ドルの調達をめざしているが、「調達額は市場に左右される。今年中に実現させたい」と、孫は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国当局、地方政府オフショア債への投資を調査=関係

ビジネス

TikTok米事業継続望む、新オーナーの下で=有力

ワールド

トランプ前米大統領、ドル高円安「大惨事だ」 現政権

ビジネス

米ペプシコの第1四半期決算、海外需要堅調で予想上回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中