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アメリカの歪んだ「アルジャジーラ封じ」

2011年2月7日(月)17時01分
ワダ・カンファール(アルジャジーラ・ネットワーク社長)

エジプト報道でアクセス激増、半数はアメリカから

 我が社はそれ以前から中東では、当事者双方の主張を伝える報道姿勢で評価を得ていた。信念を曲げ、戦場の現実を無視するつもりはなかった。

 驚きなのはアメリカのケーブルテレビ各社が、米国民はアルジャジーラの報道に興味がないと頑なに主張していることだ。アルジャジーラに貴重な周波数帯域幅を割り当てるのは、ビジネス的にも割に合わないと、彼らは言う。

 しかし、現実は逆だ。ここ数日で、エジプト情勢をライブ中継しているアルジャジーラのサイトへのアクセス数は2500%増を記録。その半数以上はアメリカからのアクセスだ。

 取材する国の社会的、政治的、歴史的な事情を記者が熟知しているという点で、アルジャジーラは特殊なメディアだ。その国の言葉を話し、地理を把握しているおかげで、他社とは違う深みのある報道ができる。それだけに、報道の自由を誇るアメリカで我々の価値ある報道を分かち合えないのは信じがたいことだ。

 それでも、真実はいずれ明らかになる。皮肉なことに、エジプトやチュニジア、レバノン、スーダンのデモ隊と同じように、アメリカの人々も壁を打破すべく立ち上がり始めた。彼らはアルジャジーラのネット上のライブ中継やユーチューブ版を閲覧し、ソーシャルメディアを駆使して情報を広めている。新時代のジャーナリズムが台頭するなか、そこで活躍する次世代の記者たちに力を与えることでアルジャジーラは成功している。

 そんな我々の報道をなぜ欧米で最も強大な国の人々が見られないのか、不思議でならない。

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