最新記事

外交

アメリカはインドの「貢ぐ君」ではない

インドが中国寄りに傾くオバマ政権を不快に思うなら、それなりの行動を起こす必要がある。アメリカは地政学的に有利な立場を自分本位に使って、もっと「その気がないふり」をしてもいい

2009年11月27日(金)15時59分
スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ケネディ行政大学院教授=国際関係論)

微妙な関係 訪米中の晩餐会で乾杯のあいさつをするシン首相を見守るオバマ大統領(11月24日、ホワイトハウス) Jason Reed-Reuters

 ニューヨーク・タイムズ紙は23日、インドの政府高官が最近すこし中国寄りになっているオバマ政権にいらだっている、と報じた。現実主義者かつオフショア・バランシング(地域の外縁に軍を配置し域内の大国を互いに牽制させ、バランスが崩れたら弱いほうを支援する)を主張する私にすれば、これはすばらしい傾向だといえる。

 アジアの安全保障はアメリカにとって他人事ではないが、当然のことながらアジアに属さないアメリカよりアジアに属するインドのほうがより深刻だ。過去10年間のさまざまな失敗にかかわらず、いまだ世界一の経済大国であり、最強の軍隊を有するアメリカと安全保障上の協力関係を結ぶことは貴重な「財産」である。インドのようなアジア諸国はアメリカの注目と協力を得るため、進んでさらなる貢献をするべきだ。

 アメリカにはほかにもたくさん選択肢があり、その支援を当たり前には受けることができない――アジア諸国がそう理解すれば、彼らはもっとアメリカに協力する。アメリカが中国に傾いていると思うなら、インドはアメリカを自分たちの方に傾かせようとより協力的になるだろう。

もっと「その気がないふり」をせよ

 インドはアメリカがアフガニスタンでもっと「血」と「カネ」を垂れ流すことを望んでいる。インドがなぜアメリカ政府にアフガニスタンで過酷な仕事をしてもらいたいかは理解できるが、ならインドはアメリカのために何をしてくれるのか。例えば、もしアメリカの戦略的関心がアフガニスタンよりも核保有国であるパキスタンの継続的安定にあるとしたら、その目的達成をより容易にするためインドはパキスタンとの緊張緩和に向けて何かするつもりがあるのか。

 私はインドがパキスタンが敵対する原因はすべてインドにあるとも、アメリカがインドをもっと冷ややかに扱うべきだとも言うつもりはない。ただ、何があってもアメリカを当てにできると安心させることが外交ではない。アメリカは地政学的に有利な立場を自分本位に活用し、もっと「その気がないふり」をしてもいい。

Reprinted with permission from Stephen M. Walt's blog, 27/11/2009.© 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中ロ首脳会談、緊密な関係称賛 プーチン氏に訪中招請

ビジネス

米TI、半導体設計会社シリコン・ラボラトリーズ買収

ワールド

ガザで子ども含む21人死亡、イスラエル軍は銃撃受け

ビジネス

テスラの中国製EV販売、1月は前年比+9.3% 3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 7
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 8
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中