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最も不安に駆られるのは大卒者 脳が不安に支配されるのはなぜ?

THE ANXIOUS BRAIN

2020年01月09日(木)18時05分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

取り越し苦労にさよならを

皮肉なことに、多くの臨床医によれば、近年特に注目すべき傾向は、何千年も前からあり、現在行われている多くの治療法よりも古くからの手法──マインドフルネスを利用するケースが増えていることだ。「今この瞬間」に集中しやすくするテクニックを使えば、将来に対する大きな不安をうまくコントロールするのに役立つ可能性がある。

「将来の予測がつかないことが間違いなく不安の中核を成している」と、ウィスコンシン大学のジャック・ニッチケ准教授(心理学)は説明する。不安とは将来起きるかもしれない何かを心配することで、そんな取り越し苦労は十中八九、時間の無駄だ。

「将来悪いことが起きたらと悩んでいる最中に、それは何日も先の話で、 実際は自分はいま部屋にいるんだと気付く。いわば、それがマインドフルネスだ。意識がどこに行ってしまっているかに気付き、今この瞬間に戻る。それが不安解消に役立つ可能性がある」

テクノロジーの影響を受けて脳科学が進歩する時代に、最も効果がありそうなのが何千年も昔からある方法だというのは、妙にうなずける。私たちに情報攻勢をかけて意識を「今」からそらしているテクノロジーのことを考えれば、なおさらだ。

不安を感じているなら、夢の新薬が開発されるまでは、携帯電話を置き、テレビのスイッチをオフにし、「今」に意識を集中してみよう。周囲の音に耳を澄ます。愛する人と散歩し、日差しを肌で感じる。何より、ソーシャルメディアやニュースを見ない。もちろん、ニューズウィークは別だが。


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2020年1月14日号(1月7日発売)は「台湾のこれから」特集。1月11日の総統選で蔡英文が再選すれば、中国はさらなる強硬姿勢に? 「香港化」する台湾、習近平の次なるシナリオ、日本が備えるべき難民クライシスなど、深層をレポートする。

[2020年1月 7日号掲載]

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