冷めたポストゲイ世代
一方、ドラマのレズビアンは皆、男性のファンタジーから飛び出てきたようなセクシー系。『Dr.HOUSE』の美人助手レミー(オリビア・ワイルド)や、『グレイズ・アナトミー』の整形外科医カリー(サラ・ラミレス)がいい例だ。しかも彼女たちが演じる女性はバイセクシュアルという設定で、ご都合主義もいいところ。
マイノリティーは常に、同化と消滅、自己表現と孤立の間で葛藤してきた。話題の映画『プレシャス』のヒロインは無学で貧しい黒人の娘だが、アフリカ系アメリカ人の間では、あれはステレオタイプだという非難と、真実を描いているという称賛が入り交じる。
ゲイの場合は世代によって姿勢が分かれる。公民権運動に身を投じた世代には、あらゆる同性愛者が受け入れられるまで闘おうとする熱さがある。
より寛容な社会に育った若い世代は、自分たちを「ポストゲイ」と位置付ける。彼らにとって、性的志向は自分という人間を語る上でほんの一部でしかない。『グリー』のカートは誇り高く、自分の意見を主張するタイプだが、現実世界のカート世代は声高に叫ぼうとはしない。目立つことが逆効果と思われる時代のようだ。
異性愛者のふりをしろとも、派手な格好を控えろとも言うつもりはない。要はバランスだ。実世界の同性愛者はもっと多様で複雑で、テレビのキャラクターがそのすべてを映しているわけではない。
同性愛者はただ、他の人々と同じように生き、愛する権利を求めているだけだ。残念ながら今の変化の速度では、「ポスト・ポストゲイ」世代になるまで実現しそうにないけれど。
[2009年12月 2日号掲載]
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