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『24』を超える宇宙戦争ドラマ

The Way We Were

宇宙を舞台に、9.11後の対テロ戦争の暗部や現代人が直面する苦悩をリアルに描き出した壮大なSFテレビドラマ『GALACTICA/ギャラクティカ』

2009年4月22日(水)16時45分
ジョシュア・オルストン(エンターテインメント担当)

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 組織的なテロ。逃れようのない戦争。標的の中に紛れ込み、自らの死を恐れない敵――PBS(公共テレビ局)のアルカイダ特集ではない。人間が作り上げた機械生命体との戦争から逃れるため、宇宙船団に乗り組んだ人々が織りなすテレビドラマ『GALACTICA/ギャラクティカ』だ(日本ではシーズン3のDVDがデイライトより09年5月22日に発売)。

 SFとはいえ、この作品ほど9・11テロ後の世界の恐怖感と不透明感、そしてあいまいなモラルをリアルに描いたものはない。その点では、『24』より上かもしれない。なにしろ『24』に登場するテロリストたちは、主人公ジャック・バウアーの拷問にかかれば、簡単に口を割ってしまう。まさに新保守主義者(ネオコン)たちの想像を絵に描いたような敵だ。

 一方の『ギャラクティカ』は、対テロ戦争が人の心に与えるダメージを偽りなく描いている。拷問や人権の制限、愛国精神の意味など複雑な問題も直視する。そして戦争によって守ろうとしているものが、本当に守る価値があるのかという根本的な問いを投げかける。

 物語は機械生命体サイロンが反乱を起こして、人類が滅亡寸前に陥るところから始まる。生き残った人々は、宇宙空母ギャラクティカに乗り組み安住の地「地球」をめざす。

 艦長のウィリアム・アダマ(エドワード・ジェームズ・オルモス)は強硬で、見えない脅威から船を守るためなら個人の自由を犠牲にすることもいとわない。結果的には彼の判断が正しかったことがわかるが、ギャラクティカに乗り組み人々は敵と戦い続けるために払う代償やその価値について、次第に悩むようになる。

 舞台を未来に設定したからこそ、脚本家が考え抜いたアイデアがうまく生かされ、手に汗握るドラマに仕上がっている。現代とはまったく異なる世界を描きつつ、怖いくらい現代を連想させるというSF小説の究極の理想を実現している。

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