最新記事
発達障害

職場で「やる気がない」と誤解される発達障害の人――評価されない努力をどう見直すか

2025年11月10日(月)18時20分
柏本 知成(KyoMi代表取締役)*PRESIDENT Onlineからの転載

夢だった職場に出会った

そこで、まずナオキさんには、ご自身の特性や自己理解を深めるワークなどに取り組んでもらいました。

その結果、転職も上手くいき、長年の夢だったホビーショップの店員になれたのです。

「毎日、宝物に囲まれて働いているよう。お給料をもらうのが申し訳ないくらい」


トレーディングカードが大好きな彼は、笑顔でそう語ります。

上司からも、「彼の圧倒的な知識量には、本当に助けられています」との評価。

また、いままでの職場では同僚とも上手く馴染(なじ)めずに、存在感を消して過ごしていたそうですが、いまの同僚の方はこう教えてくれました。

「彼の好きな赤色が、職場でブームになっているんですよ」

学生時代は「なんでもできる器用さ」が評価されがちです。

でも、社会に出ると「ひとつの分野で秀でている」ことの方が、はるかに価値があります。

ナオキさんの場合、好きなことには驚くほどの集中力を発揮する一方で、興味のないことにはまったく集中できないという特性がありました。

だから、好きなことを仕事にすることが効果的でした。

好きだからこそ、学びつづける。学びが深まるから、パフォーマンスが上がる。

その結果、仕事でも高い評価を得られるようになりました。

ナオキさんのように、自分の特性と職業がマッチしていないために、仕事で力を発揮できない人は少なくありません。

あなたの周りにいる「やる気がない」ように見える人。その人は本当に、やる気がないのでしょうか?

もしかしたら、その人の特性と仕事が合っていないだけかもしれません。

その人らしい活躍の場所が、きっとどこかにあるはずです。

ADHD脳とASD脳の特徴とは

やる気がないのは、その人の特性と環境が合っていない、ということをお話ししました。

ここからは特性ごとに、なぜ「やる気がない」と見られがちなのかについて、お話ししていきましょう。

発達障害の中でも特に、特徴的な2つのタイプに、ADHDとASDがあります。

それぞれの脳の特性を理解すると、その理由がわかってきます。

「ADHD脳」の特徴


・興味のあることには、驚くほど集中できる

・興味のないことには、まったく集中が続かない

・複数のタスクを同時にこなすことが難しい

・優先順位をつけることに苦労する

最大の特徴は、興味や関心によって大きく集中力が変化すること。

そのため周囲の目には、気まぐれで気分の波が激しいように映ります。

また思いつきの行動が多いので、「あれ? なんでこれをしてるんだっけ?」と、気がついたら、当初の予定とまったく違うことをしていたりします。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米給与の伸び鈍化、労働への需要減による可能性 SF

ビジネス

英中銀、ステーブルコイン規制を緩和 短国への投資6

ビジネス

KKR、航空宇宙部品メーカーをPEに22億ドルで売

ビジネス

中国自動車販売、10月は前年割れ 国内EV勢も明暗
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 10
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中