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2009.04.15

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GM「救世主」サターンの挫折

Saturn Was Supposed to Save GM

2009年4月15日(水)10時00分
ポール・イングラシア(自動車業界ジャーナリスト)

職場の民主主義にも限界が

 技術的には問題があったにせよ、PRキャンペーンはエンジン全開で発進した。広告には、労働者だけでなく、彼らの飼い犬や子供たちも登場。あるCMでは、工場の技術者が感極まったように「仕事に、車に、いや、自分がつくったあらゆるものに、こんなに誇りを抱いたことはない」と宣言する。キャッチコピーは「これまでとは違う会社、これまでとは違う車」だった。

 このコンセプトに食い付いたのは販売店だ。ウィスコンシン州でサターンの販売店を経営するトム・ジムブリックが、店をオープンしたのは91年4月。最初の週にいきなり大ピンチに陥るところだったという。下請けのミスで、彼が最初に売った16台のうち15台までが、エンジンの冷却水に質の悪い不凍液が入っていたのだ。

 このときGMは冷却水の交換にとどまらず、車を丸ごと交換してくれた。「なんて気前がいいんだと、顧客は感動していた」と、ジムブリックは話す。

 顧客が購入したばかりのサターンに乗って販売店から走り去るときには、従業員全員が店の前に立ち、拍手して見送る。93年6月、当時のアル・ゴア副大統領がスプリングヒル工場を視察、連邦政府も「サターン化」したいとコメントしたことで、サターンのイメージはさらに一段とアップした。

 94年6月、4万人を超えるサターンのファンと家族がスプリングヒルの工場に集まり、「サターン里帰り」イベントに参加した。385馬力のコルベットならともかく、85馬力の小型車でこのような熱烈なファンの集いが開かれるのは珍しい。参加者は工場見学やコンサート、サターンの設計者や製造担当者らとのバーベキューを楽しんだ。

 91年の発売当初の年間販売台数は7万5000台そこそこだったが、95年には28万6000台に上り、消費者満足度の調査でもトップに躍り出た。

 だがその陰で、UAWとGM経営陣はそれぞれ異なる理由で、サターンに懸念を抱き始めていた。スミスの大盤振る舞いによって、気が付けばGMは高コスト体質になり、生産能力も過剰になっていた。そして91年度には史上最大の44億5000万ドルの損失を出した。

 ロジャー・スミスの後継CEOはわずか2年間で辞職。新たに選ばれたジャック・スミス(ロジャーとの血縁関係はない)は、GMにはサターンより優先すべきものがあると判断した。その結果、ホンダやトヨタが新時代の小型車開発に注力するなか、新型サターンの開発は10年近く止まった。

 ガソリンの値段が下がり、小型車への需要も低下していた。サターン側はSUVモデルの開発を本社に申請したが、そんな暇があったらシボレーのSUVを売れという返事が返ってきた。

 一方、職場の民主主義にも限界があることが明らかになってきた。サプライヤーは「ポイントシステム」で選ばれた。組合のある企業はポイントが高いため、多少コストが割高でも品質が劣っていても、契約につながることがあった。

 労働組合のサターン部門担当者が、一般の組立工場に戻りたがらない労働者の説得に苦労する場面もあった。「それは2人の男が1本のズボンに脚を突っ込んだようなものだ」と、トヨタの元幹部コンビスは言う。「1人が右に、1人が左に行きたがれば身動き取れない」。労使の合意を重視する意思決定は日本の工場でも重視されていたが、GMと違って最終的な決定権は経営陣が持っていた。

 GMのサターンに対する熱意が薄れると同時に、UAWのデトロイト本部には新たな勢力が生まれていた。エフリンの後任となったスティーブン・ヨキッチは、前任者とは正反対のタイプで、伝説的な79年の農業機械大手インターナショナル・ハーベスターの長期ストライキを率いて名を上げた人物だった。

 ヨキッチはサターンの新しい就労形態に疑問を抱き、雇用契約の大幅な変更を提案した。より伝統的なものに戻したのだ。抵抗はあったが、最終的にヨキッチが勝った。その後数カ月のうちに彼はUAWの委員長に選ばれた。

 96年8月、GMはサターンの中型モデルをデラウェア州にある既存の工場で造るという決断を下したが、これにはヨキッチの協力があった。

 この決定はサターンにかなりの打撃であり、スプリングヒルの工場で丁寧に造り上げられた車というイメージが危うくなった。だがGMは既存の工場を閉鎖せずに済み、ヨキッチはサターン部門からの異議を抑えることができた。99年半ばに発売になったLシリーズは、ほぼ10年ぶりのニューモデルだった。

 この時点で、サターンの販売台数は4年連続で減少していた。遅まきながらSUVやハイブリッド、ロードスター型など新モデルを発表し始めた01年には、少々持ち直した。だがすべて他のGM部門が扱う類似のモデルを元にしたもので、「これまでとは違う車」にはふさわしくない。

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