コラム

アーティスツ(1):会田誠の不安、村上隆の絶望

2016年09月28日(水)12時30分

<作家の意図をきちんと理解されない不安を抱く会田誠、世界標準ルールが日本では理解も共有もされていないことに苛立つ村上隆。日本の現代アートの現状と「世界標準」を考える>

 この夏に東京で開催された会田誠の個展『はかないことを夢もうではないか、そうして、事物のうつくしい愚かさについて思いめぐらそうではないか。』(ミヅマアートギャラリー。2016年7月6日〜8月20日)で、やや珍しいことがあった。アーティストが、自作について書いたテキストを印刷したA4のシートを会場に置き、希望者に無料配布したのである。テキストの題名は「『ランチボックス・ペインティング』シリーズについて」。新作は使い捨て弁当箱を支持体とした、すなわち、コンビニなどで売られている弁当のプラスティックケース上に描かれた絵画であり、それについての解説である。

 例えば「展覧会タイトルは岡倉天心が日露戦争直後に英語で書いた『茶の本』からの引用。国家・社会・歴史といったマクロなものに対して、個人・芸術・茶室(小ささ、狭さ)といったミクロコスモスの優位性、実質的大きさを説いた本と理解している。このシリーズの精神を代弁してもらった」

 あるいは「僕と使い捨て弁当箱の美術を介した関係は2001年横浜トリエンナーレにさかのぼる。搬入作業中に支給された弁当を食べ終わったのち、空き箱を見て、絵画のアナロジーを感じた(限定された四角い枠、仕切りと配置、具体的にはモンドリアンとの類似)」。さらには「プラスチック容器、発泡ウレタン、アクリル絵の具(のメディウム)----すべてを石油から化学的に作られた20世紀以来の物質に統一したかった」など。

 会田が自作解説を個展会場に置いたのは初めてではない。作品集にも、自筆の解説が必ず付される。レベルの高い小説を発表するほどの文章力がある作家であり、テキストを読むのは楽しいし、それを通じて作品と作家について学べることは多い。それにしても、ちょっと驚かされた項目があった。「参照したアーチストの一例」という項目である。

プロフィール

小崎哲哉

1955年、東京生まれ。ウェブマガジン『REALTOKYO』『REALKYOTO』発行人兼編集長。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。2002年、20世紀に人類が犯した愚行を集めた写真集『百年の愚行』を刊行し、03年には和英バイリンガルの現代アート雑誌『ART iT』を創刊。13年にはあいちトリエンナーレ2013のパフォーミングアーツ統括プロデューサーを担当し、14年に『続・百年の愚行』を執筆・編集した。

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