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ポイ捨て最多の渋谷に現れた「ゲーム×喫煙所」の真の目的

2022年06月03日(金)14時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

きっかけは「たばこの消費場所のデータがない」こと

「小学校の欠席届をオンライン化してほしい」「自転車レーン上への路上駐車の対策を強化してほしい」など、地域住民の声を集め、議員に届ける「issues ~くらしの悩みをみんなで解決~」というウェブサイトがある。

3月末、「issues」で集まった東京23区の1万人以上の声のうち、要望件数の上位10件についての公開データベースの提供が始まった(要望の集計期間は2019年3月1日~2022年3月30日)。要望件数だけでなく、区ごとの分析結果、回答者の属性などが閲覧できる。

興味深いのは、要望のトップ10内に「喫煙所の整備」が2つもランクインしていたこと。5位に「禁煙エリアで吸う人を減らすため喫煙所を増やしてほしい」、6位に「喫煙所を増やしてほしい」が入っている。

2020年春の改正健康増進法の全面施行を機に屋内施設が原則禁煙になったが、喫煙所の数が不十分なこともあって、禁煙エリアでの喫煙、たばこのポイ捨て増加といった弊害も各地で報告されている。そのため、喫煙者だけでなく非喫煙者のあいだでも喫煙所整備への関心が高まっているが、まさにそれを反映した要望と言えるだろう。

この社会課題を「ゲーム」で解決しよう――というのが、コソドの「投票型喫煙所」であり、その前身となる同社のプロジェクト「ポイ捨て図鑑」だ。

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昨年12月の「ポイ捨て図鑑」スタート時には、投稿写真に「いいね!」が多かった人にアマゾンギフト券をプレゼントするキャンペーンを実施した(現在は終了) 写真提供:コソド

昨年12月にスタートした「ポイ捨て図鑑」は、ポイ捨てされた吸い殻を見つけた人にそれを撮影し、投稿・拡散してもらうという取り組み。吸い殻を「キツエン所に戻れず、迷子になったスイガラモンスター」という助けるべき存在として描き、ゲーム感覚で参加してもらう。投稿時には位置情報と「モンスター名」が必要だ。

「喫煙所を作っても、あまり使われなければ意味がない。ポイ捨てが多い所、困っている所に喫煙所を作りたいのですが、たばこがどこで消費されているかというデータは誰も持っていないことが分かった。どこで買われているかを示す、コンビニのPOSデータぐらいしかないんです」と、コソドの山下氏は「ポイ捨て図鑑」を始めたきっかけを語る。

「そこで街の人たちの力を借りながら、どこにポイ捨てが多いかを可視化してみようと。写真に撮る行為が(ポイ捨ての)抑止力になるという期待もありました」

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投稿されたスイガラモンスターの一例 写真提供:コソド

狙いは当たり、「ミネフジ殻」や「青い髭男」などユニークな名の付いたスイガラモンスターが、今年4月末時点で約1500体も投稿された。東京都心のたばこのポイ捨て状況が可視化され、ポイ捨てが多いエリアには喫煙所設置などの対応を検討していくという。

そして最も投稿が多かったエリアが、渋谷のセンター街だった。しかし喫煙所を作ろうにも、よい物件がなかなか見つからない。

そんなとき、宇田川クランクストリートに物件を持つ不動産会社から、山下氏に話が持ち込まれたという。クランクストリートは私道なので、屋外喫煙所を作るとなっても話が早い。「期間限定の実証実験的なものになるが、話題を作り、みんなにポイ捨てを考えてもらうきっかけにできる。以前から考えていた企画をやってみようと思いました」と、山下氏は言う。

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