不審な「トランプ相場」取引で数百万ドル利益も、専門家が調査訴え
イラク領海内で損傷したタンカー。バスラ沖で撮影(2026年 ロイター/モハメド・アティ)
Douglas Gillison Saqib Iqbal Ahmed Anirban Sen
[ワシントン/ニューヨーク 29日 ロイター] - トランプ米大統領が2期目に入って打ち出した政策が市場を揺さぶった「トランプ相場」を巡り、発表前に情報を入手した身元不明のトレーダーたちが取引で数百万ドルの利益を得た可能性が浮上している。一部の法律専門家は公正な市場を保護し、情報漏えいの有無を確認するために調査すべきだと訴えている。
いずれもトランプ氏の決定で市場に大きな変動をもたらした(1)輸入関税の引き上げ(2)南米ベネズエラのマドゥロ前大統領の拘束(3)イスラエルと組んでのイラン攻撃についてロイターが調査したところ、投資家が発生直前に内容を把握していたように見えると指摘した事例が少なくとも4件確認された。これらの取引は、オプション、商品先物、予測取引などさまざまな種類の市場や資産が対象となった。
元米商品先物取引委員会(CFTC)幹部と、インサイダー取引を研究してきた3人の研究者を含めた専門家は、タイミングと規模を考慮するとこれらの取引が政府内部の情報に基づいていたかどうかを確かめるために精査することが必要だと指摘する。
インサイダー取引を専門とするカリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)法学大学院のアンドルー・バースタイン氏は「極めて不審な動きだ」とし、事例の数は限られるものの、「政府高官やその知人による情報に基づく取引があった場合に見られるような」パターンを示していると言及した。
元CFTC執行部門ディレクターで、元連邦検察官のアイタン・ゴールマン氏は、取引所やCFTC、司法省は通常ならばこうした取引を「異常かつ興味深い」とみなすだろうとの認識を示した。
ホワイトハウスのデサイ報道官は電子メールで、政府の倫理指針によって連邦政府職員が非公開情報を利用して利益を得ることは禁じられているとしながらも、「証拠もなく、政権当局者がそのような活動に関与しているとするいかなる示唆も根拠がなく、無責任だ」とコメントした。
CFTCの報道担当者は「不審な取引」について取引所と常に連絡を取り合っており、独自に監視しているとしつつ、こうした不審な取引について調査に乗り出したかどうかについては言及しなかった。
米証券取引委員会(SEC)はコメントを差し控えた。司法省はコメント要請に応じなかった。
<絶妙なタイミングの取引>
ロイターの調査では、絶妙なタイミングで投資家が利益を得ていた4つの顕著な事例が浮かび上がった。1つはトランプ氏が「解放の日」として打ち上げた関税措置を一時停止することを発表する直前の数分間に、オプショントレーダーが取引によって数百万ドルの利益を上げ、S&P500種総合指数が9.5%急騰した昨年4月の出来事だ。
今年1月にはブロックチェーン(分散型台帳)に基づく予測市場「ポリマーケット」で、正体不明の参加者がマドゥロ氏の失脚に賭けて40万ドルを超える利益を得た。この匿名アカウントは昨年12月に開設され、米国が今年1月31日までにベネズエラへ侵攻した場合に配当が支払われる賭けに3万ドル超を投じていた。
2月28日にイランの最高指導者ハメネイ師が殺害されたのに先立ち、ポリマーケットや「カルシ」といった予測市場での賭けはインサイダー取引や、倫理上の懸念を引き起こした。ブロックチェーン分析会社バブルマップスは、ハメネイ師を殺害した米国・イスラエルの攻撃の直前に掛け金を投じ、ポリマーケットで計120万ドルの利益を得た6つのアカウントを特定した。
身元不明のトレーダーは今週、トランプ氏がイランのエネルギー施設への攻撃を延期すると発表して原油価格が急落する前の数分間に5億ドル規模の原油取引を手がけていた。これらの取引は、米取引所運営会社CMEグループが擁するニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)が舞台となった。
CMEの広報担当者は、原油先物取引やNYMEXがこれらの取引を調査しているかどうかについてのコメントを差し控えた。
カルシとポリマーケットは今月、それぞれの予測市場でインサイダー取引を取り締まるための新たな規則を導入した。カルシの広報担当者は今後も新たな規則を「必要に応じて実施し、既存の技術やパートナーシップの改善を続けていく」とし、今月23日の原油先物取引と同規模の賭けがカルシで行われていれば検知されていたはずだとコメントした。
ポリマーケットのニール・クマール最高法務責任者(CLO)はインタビューで、同社が米国のプラットフォームを経由したあらゆる取引をリアルタイムで監視・追跡しており、不審な取引活動を迅速に取り締まることができる一連の管理体制を整えていると主張した。
これらの一部の賭けを巡っては規模の大きさや、二者択一的な性質だったことから、専門家からは何らかの事前情報を持っていた可能性があるとの見方が出ている。一例として5億ドル規模の石油市場での取引は莫大な資金力だけでなく、極めて強い確信があることの表れでもあると指摘する。
元SECニューヨーク事務所執行部門共同責任者のデビッド・ローゼンフェルド氏は「特異な事象に対する賭けなどを扱う場合、誰かが特定の内部情報を握っているのではないかという疑念がはるかに強まる」との見解を示した。





