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アングル:中東危機による海上輸送混乱、日韓の中古車業界にも波及

2026年03月25日(水)11時53分

写真は輸出用の中古車の集積地にある販売済みの自動車。韓国の仁川で3月16日に撮影。REUTERS/Kim Hong-Ji

Heekyong Yang Daniel Leussink Hyunjoo Jin

[ソ‌ウル/横浜 24日 ロイター] - 米国とイスラエルによる2月28日のイランへの攻撃開始‌で中東地域が危機に陥り、世界中の海運ルートが混乱している。その余波は日本で中古車​ビジネスを営むウマル・アリ・ハイダー・アリさんの事業にも及んでいる。

日本在住20年のハイダー・アリさんは、住み慣れた日本から南アジアや中東、アフリカへ中古車⁠を輸出している。日本は規制が厳しく、自動車に​定期的な点検や整備を義務付けている。そのため日本から輸出される中古車は、耐久性が高く比較的状態が良いとして、こうした地域で引く手あまただ。

対イラン戦勃発から数日後、ハイダー・アリさんは出荷した車500台余りの貨物の一部が海上で足止めされているという知らせを受け取った。スリランカの港はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイから転送された貨物であふれかえり、船が入港できなかった。結局、車両は先週に予定より10日超も遅れてスリラン⁠カ南部のハンバントタ港で荷揚げされた。

ハイダー・アリさんの苦境から、中東危機とホルムズ海峡の事実上の閉鎖による日本や韓国の中古車輸出ビジネスの混乱ぶりが読み取れる。この業界は中小企業がほとんどだが、全体では世界に⁠広がる一大産​業となっている。

<港湾混雑でパニックに>

ハイダー・アリさんによると、港の混雑によって日本の海運業界の一部はパニックに陥り、出荷を取り消す企業もあった。貨物をパキスタンや中国の港へ迂回させることを提案する業者や、車1台につき5000ドル(約79万円)の保証金を要求する業者もいた。出荷した中古車の一部は日本に戻される可能性もあるという。

横浜に拠点を置くハイダー・アリさんの会社「コウベ・モーター」は年間約1万8000台を出荷しており、その大半は母国スリランカ向けだ。現地ではトヨタ自動車やホンダの小型車が人気だ。今は顧客が待つドバイに船舶が到達できなかったため、ロールスロイス、ラン⁠ボルギーニ、フェラーリなど約50台の高級中古車がスリランカや中国で荷揚げされている状態だ。一部の顧客‌には航空輸送も選択肢となり得るが、コストが高く、利用できるのは最も裕福な層に限られるという。

昨年の日本と韓国からの中古車輸出は計190億⁠ドル相当で、⁠このうち日本が半分強を占めた。韓国の昨年の中古車輸出は88万3000台で、その3分の1強が中東向けだった。財務省統計によると、日本からの最大の中古車輸出先はアラブ首長国連邦(UAE)で、昨年は22万4000台と全体の約15%を占めた。

ホルムズ海峡はドバイ経由の輸送のボトルネックになっている。戦争が長引けば、輸出業者は石油価格や運賃の上昇、為替変動、オークション価格の下落、航路減少の恐れなど複合的な圧力に直面しかねない。

<韓国からの出荷が停止>

韓国では、今回の紛争により、中古車ディーラーの‌かき入れ時に出荷が停止する事態となっている。中東などの地域は旅行や建設などの業界の活動が活発になる3月から9月に中古​車の需要がピ‌ークを迎える。

海運会社幹部のカン・テヤン氏は、⁠いつもならば車両の80%程度が中東向けとなる韓国の港湾都市​・仁川の車両保管施設は取り扱いが急激に鈍っていると明らかにした。現在扱っている車両の70%超が保管施設で足止めされている。貨物を積んで既に航行中の船舶の中には、当初の目的地へ向かわず、航行を停止したり、航路を変更したりする動きもあるという。

船舶の一部はホルムズ海峡を避け、中東の別の場所や、さらに遠方で荷揚げする計画だ。ディーラーによると、これは主に海運会社の判断であり、ディーラー側は代替措置を協議している。

中古車販売会社オートモービル・インターナショナルのチン・ジ‌ェウン社長は「戦闘が起きるたびに、様子見しかできなくなる」とこぼす。今回は、通常なら中古車価格が上昇し始めるタイミングで紛争が起きた。韓国内で購入済みの車両を保管するために毎月約4000万ウォンを支払っている。ただ、紛争​終結後の需要回復を見込み、市場が低迷しているこの時期に車両を前倒しで⁠購入する計画だ。

一部の輸出業者は代わりの市場を探しているが、選択肢は限られる。ベンタス・オートのユン・スンヒョン社長は、アフリカや中南米はさらに出荷台数を増やしてもそれを吸収できるほどの需要がなく「単純にこうした地域に出荷先を振り替えることはできない」と解説する。

スンヒョ​ン氏の会社が1月下旬に出荷したコンテナは、3月初旬にドバイのジュベルアリ港に到着する予定だったものの遅れており、運ぶ船舶はインド西海岸のムンバイ付近で足止めされている。原油価格の上昇で運賃も上がっている。

年間売上高66億ウォンのうち半分超をUAEに依存しているベンタス・オートにとって、今の混乱は大きなリスクだ。特に海上輸送中の貨物が最終的にどこへ到着するのか分からないのが問題で「現時点では事実上、解決策はない」と嘆いた。

ロイター
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