ニュース速報
ワールド

アングル:16歳未満のSNS禁止する豪、ユーチューブ適用除外に疑問も

2025年02月08日(土)08時25分

 オーストラリア政府は昨年、16歳未満の子どもによる交流サイト(SNS)利用を禁止する法律を可決した際、米アルファベット傘下の動画投稿サイト「ユーチューブ」は適用除外とした。写真は、SNSアプリを携帯で見る高校生。2024年11月28日、(2025年 ロイター/Asanka Brendon Ratnayake)

Byron Kaye

[シドニー 3日 ロイター] - オーストラリア政府は昨年、16歳未満の子どもによる交流サイト(SNS)利用を禁止する法律を可決した際、米アルファベット傘下の動画投稿サイト「ユーチューブ」は適用除外とした。しかし専門家からは、ユーチューブによって子どもが中毒性のある有害コンテンツにさらされていると懸念する声が上がっている。

オーストラリアは2025年末までに、16歳未満の子どもによるTikTok(ティックトック)、スナップチャット、メタ傘下のインスタグラムとフェイスブック、Xの利用を遮断する。これらプラットフォームにはアクセスについての厳格な年齢制限を設けるように義務づけ、従わなければ高額な罰金を科す。

政府は同時に、ユーチューブは教育に役立つ貴重なツールであり、「主要なソーシャルメディア・アプリ」ではないことを理由に、全年齢向けに開放し続けることとした。

当初の禁止令はユーチューブも対象としていたが、企業幹部やユーチューブを利用する子ども向けコンテンツ・クリエイターの意見を聞き、除外を認めた。

ローランド通信相の報道官は「ユーチューブが娯楽や余暇向けに機能しているのは間違いないが、教育や情報コンテンツの重要な源でもあり、子どもや保護者、教育機関に頼りにされている」と指摘。除外措置は「ユーチューブは中核的なソーシャルメディア・アプリではないというオーストラリア社会の幅広い見方と整合的だ」と付け加えた。

昨年11月に可決された画期的な法律は、SNSに関して世界で最も厳しい規制をいくつか定めている。

しかし、ロイターの取材に応じた6人の過激思想および精神衛生の研究者は、ユーチューブの適用除外は有害なコンテンツから若いユーザーを守るという法律の主要目的を損なうものだと主張する。

調査によると、ユーチューブはオーストラリアで10代の若者に最も人気の高いソーシャルメディア・サイトであり、12歳から17歳の10人に9人が利用している。

<極右的な内容>

ロイターの取材に応じた研究者らは、禁止されたサイトと同様の危険なコンテンツがユーチューブで公開されていると述べた。

マッコーリー大学安全保障研究・犯罪学部の講師、リセ・ウォルデック氏は「ユーチューブは過激思想、暴力、ポルノに関するコンテンツを拡散するだけでなく、若者に中毒性の高い動画コンテンツを提供しているという点でも、深刻な問題を抱えている」と語った。

「暴力的過激主義とテロへの急進化への対策ネットワーク」のメンバーであるヘレン・ヤング氏もユーチューブのアルゴリズムについて、「若い男性および少年と認識したユーザーに対し、真に極右的な内容を提供している。その中には主に人種差別的なものもあれば、主に女性嫌悪、反フェミニズム的なものもある」と述べ、同様の懸念を示した。

ロイターの取材に応じた研究者らは、オーストラリアで最も人気の高いサイトが例外扱いされていることに疑問を呈した。

ユーチューブの広報担当者は、尊敬を促すなど質の基準を満たすコンテンツを推奨するとともに、「一度見るだけなら無害でも、一部の若い視聴者が繰り返し視聴すると問題となる可能性を秘めたコンテンツ」について、繰り返しの推奨を制限していると説明した。

またユーチューブはオンラインの公式声明で、規制を厳格化しており、自動検出システムで検出される有害コンテンツの定義を拡大したことを明らかにしている。

<ユーチューブのアルゴリズムをテスト>

ユーチューブのアルゴリズムが未成年者にどのようなコンテンツを勧めるかをテストするため、ロイターは16歳未満の架空の子どもの名前で3つのアカウントを作成した。性別、および新型コロナウイルスに関する2つの検索では、20回のクリックで女性嫌悪や極端な陰謀論を宣伝するリンクにつながった。3番目の「欧州の歴史」に関する検索では、12時間にわたって断続的にスクロールし続けた後、人種差別的なコンテンツにたどりついた。

また、女性嫌悪的もしくは人種差別的な発言者を意図的に探し出す検索では、いずれも20回以下のクリックで有害なコンテンツに行き当たった。ロイターはユーチューブにもテストの方法と結果を提供し、ユーチューブは内容を精査するとした。

ロイターはテストで検出された6本の動画もユーチューブに報告。ユーチューブは、オーストラリアのネオナチ指導者のインタビュー動画を、ヘイトスピーチのルールに違反しているとして削除した。女性嫌悪的なコンテンツを宣伝するアカウントは削除された。あと4本の動画は現在も残っている。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米大手銀、アルゼンチン向け200億ドル支援計画を棚

ワールド

トランプ氏、ブラジル産牛肉・コーヒーなどの関税撤回

ワールド

ロシア、ウクライナ東部ハルキウ州の要衝制圧 ウクラ

ビジネス

金融政策の具体的手法、日銀に委ねられるべき=片山財
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中