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アングル:米株のテック依存、「ITバブル期」上回る 市場を不安定に

2025年11月07日(金)15時33分

ニューヨーク証券取引所で10月撮影。REUTERS/Brendan McDermid

Lewis Krauskopf

[ニューヨーク 6日 ロイター] - AI(人工知能)関連株は今週に入って不安定な値動きをしており、米国の株式市場の上昇基調がテクノロジー分野にかつてないほど依存している状況をまざまざと見せつけている。

S&P総合500種とナスダック総合指数は4日、テクノロジー銘柄の急落が重しとなり、1日の下落幅として約1カ月ぶりの大幅な落ち込みを見せた。5日はやや回復したが、テクノロジー関連株は下落幅をやや広げた。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの上級指数アナリスト、ハワード・シルバーブラット氏によると、テクノロジー関連株は長期にわたる好調な運用実績に支えられ、S&P総合500種の構成銘柄に占める比率が約36%で最大の分野となっている。こうした構成比率の高さは25年前のITバブル期を上回っているという。

さらに、グーグルの親会社アルファベット、アマゾン・ドット・コム、テスラ、フェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズといったテクノロジー分野の一部として分類されていない巨大企業を加えると、S&P総合500種の構成銘柄に占める比率はほぼ半分に達する。

AIの将来性に大きな期待がかかる中で、主要な株価指数に占めるテクノロジー分野の高い比重はより幅広い市場が悪材料に対してもろい状況にあることを意味すると投資家らは指摘する。

米南部サウスカロライナ州のグリーンウッド・キャピタルの最高投資責任者ウォルター・トッド氏は「S&P総合500種の構成銘柄の相当な部分が、一つのセクターと一つの投資テーマに結び付いている」とし、「AI関連でちょっとした問題でも起きれば、個別銘柄だけでなく市場全体にとってもリスクとなる」と言及した。

テクノロジー分野は先週から3%以上下落しており、AI関連株として注目されてきた米データ解析企業パランティア・テクノロジーズや米半導体大手エヌビディアのような銘柄が軟調となっている。

投資家らによると、テクノロジー関連株は力強い上昇基調を続けた後で一時的な調整が必要だったのに加え、こうした下落は健全な調整局面として一段の上昇につながる可能性もあるという。

ウォール街の大半で同時に「AIバブル」の兆しに対する懸念も根強く、より深刻な下落局面が始まる可能性がないかといった弱点も詮索されている。

米金融大手のモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスの最高経営責任者(CEO)は4日、株式市場が調整局面に向かっている可能性があると警告し、株価が高水準にある現状を懸念すると強調した。LSEGデータストリームによると、S&P総合500種の予想株価収益率(PER)は約23倍で、過去10年平均の18.8倍を上回っている。テクノロジーセクターの予想PERは約32倍で、過去10年平均の22.2倍を大きく超えている。

テクノロジー関連株の輝かしい運用実績は現時点で3年以上におよぶ強気相場の象徴となっている。S&P総合500種はこの強気相場で90%上昇している一方で、テクノロジーセクターは186%の上昇を見た。

最近の下落にもかかわらず、テクノロジー関連株は年初来でS&P総合500種の11セクター中で最も好調であり、約27%上昇している。この上昇率は、過去最高値に近い水準にとどまるS&P総合500種全体の15%超を上回っている。

この卓越した運用実績により、S&P総合500種に占めるテクノロジー関連株の構成比率は年初時点の約33%から現在の約36%に上昇した。次に大きいセクターの金融は13%にとどまっている。「テクノロジー関連株が持続的に大きく下落するようなことがあれば、株価指数も下がるだろう」と、ミラー・タバックのチーフ・マーケット・ストラテジストのマット・マレイ氏は述べた。

テクノロジー企業の好調な利益が、株価上昇と株価指数に占める高い比重を支えている。LSEGの収益調査責任者タジンダー・ディロン氏によると、テクノロジー企業のもたらす利益は第3・四半期でS&P総合500種の構成銘柄全体の約25%を占める見通しだという。

投資家は実際、AIテーマの中心にあるテクノロジー企業が25年前のインターネット黎明期の企業よりも概して財務的にはるかに健全だと即答する。「変革を主導してAIで収益を上げている企業は実在する企業であり、実際にキャッシュフローを生み出している」と、ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニア・グローバル・マーケット・ストラテジストのスコット・レン氏は語った。

レン氏は、テクノロジー大手がAI関連の力強い設備投資を維持できる能力が株式市場の推進力の主因となっているとして「力強い設備投資が実現しないだろうとの兆しが少しでもあれば、市場はすぐに下落局面に突入するだろう」との見方を示した。

ロイター
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