ニュース速報

ビジネス

S&P、英格付け見通し「ネガティブ」に 財政赤字縮小予想を転換

2022年10月01日(土)11時57分

 9月30日 大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は30日、トラス英政権が発表した大型減税策は債務を拡大させるとして、英国国債の格付け(AA)の見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。写真は9月30日、ロンドンで撮影(2022年 ロイター/Maja Smiejkowska)

[ロンドン 30日 ロイター] - 大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は30日、トラス英政権が発表した大型減税策は債務を拡大させるとして、英国国債の格付け(AA)の見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。

クワーテング財務相は9月23日に約450億ポンド(500億ドル)規模の減税および国債増発などの財政計画を発表。ポンドや英国債が急落し、イングランド銀行(英中央銀行)は量的縮小措置を急きょ延期し、市場安定化に向け時限的な長期国債買い入れ措置を導入した。

S&Pの格付けは、ムーディーズやフィッチより1ランク高い。

S&Pは、英国の公的債務の対国内総生産(GDP)比率が2023年から低下するとの従来予想を修正し増加傾向にあると指摘した。

その上で「当社の最新の財政予測では、たとえば経済環境のさらなる悪化により英国の経済成長が減速した場合や、市場動向や金融政策引き締めにより政府の借り入れコストが予想以上に上昇した場合には、リスクが増大する」とした。

英経済が今後数四半期でテクニカルリセッション(2四半期連続のマイナス成長)に陥り23年はGDPが0.5%縮小する予想した。

トラス政権は減税のほか、移民政策や規制など中長期的な課題で構造改革を進めることが成長を押し上げると想定している。S&Pはそのような恩恵は短期的には控えめなものにとどまるとみている。

「政府が最終的に財政再建策を導入して債務を減少軌道に乗せる予定なのか現時点で不明で、発表された計画は借り入れで賄うと想定している」とし、23年から25年の財政赤字予想(年平均、GDP比)を5.5%(従来予想は3%)に上方修正し、公的債務(GDP比)は25年までに97%に上昇すると予想した。

ムーディーズは28日、財源の裏付けのない減税は財政赤字拡大と金利上昇を引き起こし、投資家の信頼を脅かす恐れがあるとして「クレジットネガティブ(信用に悪影響を及ぼす)」と判定した。

DBRSモーニングスターは30日、減税計画に起因する財政悪化がいずれ格付けの引き下げ方向のリスクになる可能性があると指摘した。同社の英国の格付けは「AA(ハイ)、安定的」。

トラス首相とクワーテング財務相は30日、11月23日に発表する「中期財政計画」と予算責任局(OBR)の経済予測を巡り、OBRのリチャード・ヒューズ局長と会談した。市場の懸念を払拭するため「中期財政計画」の公表を前倒しすべきとの声が出ているが、公表時期は従来予定通りとした。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル中銀が金利据え置き、2会合連続 長期据え置

ビジネス

FRB議長、「第3の使命」長期金利安定化は間接的に

ワールド

アルゼンチンGDP、第2四半期は6.3%増

ビジネス

米大手銀、最優遇貸出金利引き下げ FRB利下げ受け
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中