ニュース速報

ビジネス

アングル:米ウォール街、昨年の採用ブームに沈静化の兆し

2022年06月26日(日)07時53分

 米国経済の先行き不透明感が強まり金融市場が低迷する中、昨年は採用難に見舞われたウォール街では雇用を巡る過熱が沈静化しつつある。写真はウォール街のサイン。ニューヨークで2021年11月撮影(2022年 ロイター/Brendan McDermid)

[23日 ロイター] - 米国経済の先行き不透明感が強まり金融市場が低迷する中、昨年は採用難に見舞われたウォール街では雇用を巡る過熱が沈静化しつつある。

シティグループ、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴなどは、昨年から今年初めにかけて熾烈な採用競争に直面し、人材確保のために給与引き上げを余儀なくされた。ボーナスは15年ぶりの高水準に跳ね上がった。

しかし、採用コンサルタントや経営者、最近のデータからは採用への熱が薄れてきていることがうかがえる。

コンサルティング会社ジョンソン・アソシエーツのマネジングディレクター、アラン・ジョンソン氏は「2021年末は雇用も給与も空前の需要で過熱していたが、通常に戻りつつある。年末までに冷え込むかもしれない。現在は移行期だ」との見方を示した。

米労働省労働統計局のデータによると、証券、商品契約、投資、ファンド、信託のカテゴリーで採用ペースが急激に鈍化した。4月は雇用が4600人に増加したのに対し、5月は1200人増にとどまった。21年は平均3400人増だった。

人材紹介会社GQRグローバル・マーケッツのシニア・バイス・プレジデント、アルベルト・ミラバル氏は、一部の顧客は人材探しを一時停止していると明らかにした。世界市場が低迷する中、規模が大きくなったチームをさらに拡大する前に「状況を見極める」意向という。

コーン・フェリーで資産運用会社の採用を支援するグロリア・ミリオーネ氏によると、過去数年はESG(環境・社会・ガバナンス)投資やインパクト投資部門で特に採用が活発だった。しかし昨年後半の「採用ブーム」は、3月末から4月にかけて「より穏やかなペース」になり始めたと語った。

人材コンサルティング会社シェフィールド・ハワースのマネジングディレクター、ジュリアン・ベル氏は「最も大きな落ち込みは株式資本市場の分野だ」と指摘する。

ロシアのウクライナ侵攻によるインフレの悪化や金利上昇を受けて、ウォール街では一部の企業がリセッション(景気後退)リスクについて神経質になっている。

ただ、投資銀行では雇用が減速し、給与への期待も低くなっているが、差し迫ったレイオフは懸念されていない。

プライベートエクイティ、ヘッジファンド、投資ファンドなどを顧客に持つオデッセイ・サーチ・パートナーズのマネジングパートナー、アンソニー・カイズナー氏は「顧客は現在の取引量に対して人手が足りていないと考えている」と述べた。一部の顧客はまだ人材確保に大きな意欲を持っているという。

(Sinéad Carew and Saeed Azhar記者)

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、与那国島ミサイル配備計画を批判 「あらゆる干

ワールド

NZ中銀が0.25%利下げ、景気認識改善 緩和終了

ワールド

中国、米国産大豆を大量購入 米中首脳会談後に=関係

ワールド

アングル:世界で進むレアアース供給計画、米は中国依
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中