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最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性

山本彌生|アメリカ

若いZ世代が切り開く『子供の貧困とエンパシー』ポートランド編

Amanda Diary.png自分を上げるために、毎日同じことをする。すると、それがゾーニングとなって心の切り替えがし易くなります。アマンダさんの日課は、毎朝ほんの数分かけて『感謝の項目』をさっさっと書くこと。一日を前向きな気持ちで始められるようにと。そんな思いから始めました。 Photo | Amanda Ivie

| 若い世代が必要とする『アウトリーチ』、日本との類似点

CCCCの支援プログラムを提供した家族の数。それは、去年1年だけで1000弱にも及ぶと言うアマンダさん。そして、驚くべき数字を見せてくれました。

「私たちが支援を提供する家族のほとんどは、生活困窮者や低所得者です。40%がホームレス経験者。26%が貧困ライン以下の収入。14%が公的扶助を受理中。9%が貧困層。7%が超貧困。4%の子供は、里親のもとでの養育が余儀なくされています。

親子がおかれた壮絶な人生。断ち切れない貧困や暴力のループ。小説より奇なり、というケースを私たちは想像することしかできません。ほとんどの親や子は、たまたま、そんな家庭に生まれついてしまった。日本やアメリカという、先進国での貧困層の悲しい現実です。」

例えば、シングルマザーの一般のケース。彼女たちは、生活をしていく為に働きづめ。疲れ切って、乾ききって、子供の心に寄り添う余裕すらない人がほとんどです。

今、支援を必要としている多くの若い世代の親たち。そこには、日米のZ世代の共通点があります。それは、支援が必要な人が自らセンターなどに足を運ぶことに対して、高いハードルを感じることです。自力で手を挙げて助けを求めること、イコール自己主張することに躊躇する世代であることが、孤立を高めています。

現在、高齢化社会が深刻な状態となっている日本。今、そしてこれからの社会を作り上げていくZ世代への理解は重要です。それらの価値観を受け入れ、対応した企業や組織づくりを進めなければ、成長は見込めないからです。

助けてもらうのに、何を甘いことを言っているんだ。そう思う方も多いでしょう。でも実際、本当にもがき苦しんでいる人は、「苦しい」と自力で声をあげることができない。ですから、声掛けと同時に支援をする側がアウトリーチという形でのサポート体制をすることで、その効果は高まります。

「今の時期、特に社会と文化は日々変化をしています。ですから、すべての分野の業種は、多様性、持続可能性という目標に向かって努力することが求められます。提供する側は、常に学び、新しいシステムやプログラムを取り入れる。変化をしながら、持続的にプログラムを改善していくことが必要になっているのです。」

サービスや支援を提供する側だと言って、甘んじていると効果は低下・低迷し続けます。ということは、公的資金や支援金を流し捨てているのと同じ。そんな、もったいない事にもなり兼ねません。

社会的弱者が必要としているニーズに合うために、行動をしていく必要性。どうすれば、どう動けばより良い結果が出るのか。常に、供給する側の人間も成長し続けること。そして、今の時代と文化に合わせたやり方で、結果を出していくことが必須だと話すアマンダさん。

幼少時の貧困や環境の劣悪からくる、低い学習能力や社会的経験不足。子供と親になった若い世代の人生に、社会全体に、どのような悪影響を及ぼすのか。こんな質問に対し、こう話し続けます。

「幼少から低学年の学習は、子供の人生における強い基盤を作る大切なものです。でも忘れがちなのは、社会的情緒スキルの大切さです。

健全な人間関係を形成するために、大切な感情の共有やコントロールの仕方。これは子供だけではなく、親世代の大人の成長にとっても重要になります。

特に、静かな暴力のネグレクト(育児放棄、幼児放置)。そして、表面だった暴力のDVやハラスメント。これらは、子供自身にとっても、そして社会全体にとっても、大きな問題に直結します。現実的に、何代も続く悪の行為の連鎖を断ち切ることは一筋縄ではいきません。世代をまたいでのトラウマは、想像を絶するほど深いものです。」

自分には子供がいないから関係がない。自分が生きている間には、社会もそれほど変わらないだろうし、増税もそこまでは影響しないだろう。そういう発言をよく耳にします。自分さえ良ければ、自分が大事に思う人さえ良ければ、あとはどうでもいい。そう考えるのは普通のことだと思います。

「もし出来ることなら、まったく会ったことのない。けれども、たった今、日々の暮らしに苦しんでいる人のことをほんの少し想像をしてみる。真剣に考えてみる。そんな思考が、自分が大切に思う人と、より一層心を通わせることに繋がるかもしれません。」

次ページ アマンダ流 日々の暮らしの中で『心をリセットし続ける 3つのヒント』

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著者プロフィール
山本彌生

企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。

Facebook:Yayoi O. Yamamoto

Instagram:PDX_Coordinator

協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)

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