「韓国のトランプ」李在明、ポピュリズムで掴んだ勝利の代償とは?

SOUTH KOREA’S TRUMP

2025年6月6日(金)15時42分
木村 幹(神戸大学大学院国際協力研究科教授、本誌コラムニスト)
「韓国のトランプ」李在明、ポピュリズムで掴んだ勝利の代償とは?

大統領選で終始リードを保った共に民主党の李在明が「3度目の正直」でトップの座へ CHUNG SUNG-JUN/GETTY IMAGES

<尹錫悦の弾劾を経た出直し選挙で勝利した李在明。だがその政権は、司法リスクと政策の空白、そして社会の分断という三重の難題に直面している>

社会における分断を克服する道は2つある。長期的には経済成長であり、これにより根底にある人々の不満が解消できる。対して短期的な方法は尹錫悦(ユン・ソンニョル)を中心とする内乱陰謀勢力の撲滅だ。

内乱により社会を分断しようとした彼らを排除することこそが社会的分断を克服するための道である。(第2回大統領候補者討論会での李在明(イ・ジェミョン)の発言の要約)

◇ ◇ ◇


6月3日の韓国大統領選で、「共に民主党」候補者の李在明が当選した。

選挙戦では一時、「国民の力」候補者の金文洙(キム・ムンス)前雇用労働相に支持率にして1桁台まで迫られる局面があったものの、終始、他の候補者をリードし続けた。2017年から22年までの文在寅(ムン・ジェイン)政権が終わってわずか3年で、進歩派の大統領が再び誕生することになった。


国会の多数を野党に握られ、そのコントロールに苦しんだ挙げ句、戒厳令を宣布するに至った尹錫悦政権と異なり、李が率いる新与党は全300議席中、175議席を占めており、同じ進歩派に属する祖国革新党や進歩党を合わせるとその議席数は188議席にも達している。

一見、大統領与党が国会の大多数をも押さえる安定政権の誕生、に見える。

とはいえ、それでは来たるべき李在明政権の前途は安泰か、と言えば必ずしもそうだとは言えない。

SDGs
「SDGs認証」の可能性とは?...日本サステナブルビジネス機構(JSBO)が有識者フォーラムを6/10に開催
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、米大手自動車向けレアアース輸出に一時許可付与

ビジネス

年内利下げの可能性、選択肢から外れず=フィラデルフ

ワールド

トランプ氏、マスク氏との会談「興味なし」 関係修復

ビジネス

米5月雇用13.9万人増に鈍化、失業率横ばい 関税
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが、今どきの高齢女性の姿
  • 2
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 3
    脳内スイッチを入れる「ドーパミン習慣」とは?...「朝の1杯」と「心地よい運動」の使い方
  • 4
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 5
    壁に「巨大な穴」が...ペットカメラが記録した「犯行…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 8
    ガザに向かうグレタ・トゥーンベリの支援船から救難…
  • 9
    ウーバーは絶体絶命か...テスラの自動運転「ロボタク…
  • 10
    日本に迫る「ゼロパンダ」の未来...中国はもう貸さ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 8
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 9
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 10
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中