最新記事

ウクライナ戦争

「アメリカの傭兵」──ワグネルが名指しで命を付け狙う精鋭グループ

Notorious Wagner Group targeting volunteers in Ukraine, U.S. trainer says

2022年12月8日(木)18時30分
デービッド・ブレナン

ウクライナ軍も多くの兵士をい失った。写真は、バフムト前線の野戦病院で兵士に応急処置を施す医師(12月1日)  Leah Millis-REUTERS

<米海兵隊の元大佐が設立し、ウクライナ東部の前線地域で活動するボランティア組織>

ウクライナ東部ドネツク州の要衝であるバフムトをめぐる攻防は、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始して以降、最も過酷な戦いのひとつとなっている。ウクライナ軍は拠点を要塞化したり塹壕を掘ったりして、砲撃によって荒廃した土地に進軍してくるロシア軍に抵抗している。

バフムトとその周辺地域への激しい攻撃で、ロシアの軍事ブロガーや扇動家が勢いを取り戻しており、ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループとその創設者エフゲニー・プリゴジンも力を誇示している。プリゴジンはロシアのウラジーミル・プーチンに近いオリガルヒ(新興財閥)で、2月24日の軍事侵攻開始以降、大きな注目を集めるようになった。

【動画】ロシアの空爆で徹底的に破壊された激戦地バフムト

プリゴジンと彼が率いるワグネルの戦闘要員(受刑者を大量に採用したことでその数は膨れ上がっている)には、ウクライナ軍以外にも標的がいるようだ。それは「モーツァルト・グループ」。米海兵隊の元大佐であるアンドリュー・ミルバーンが設立したNGO(非政府組織)で、バフムトをはじめとする前線地域からの一般市民の避難を手助けしているボランティアの組織だ。

「アメリカの傭兵たち」を標的に

プリゴジンは11月にメッセージアプリ「テレグラム」上で、ミルバーン率いる「アメリカの傭兵たち」が痛手を負ったウクライナ部隊の指揮を執っていると主張。その主張はすぐに、ロシアの複数の報道機関に取り上げられた。

morzarttraining.jpeg
ウクライナ新兵の訓練  THE MOZART GROUP

ミルバーンは本誌に対して、ワグネルがウクライナ東部で活動している彼らボランティアを標的にしたとしても「驚かない」と語り、「ドンバス地方には今、私たちを泊めてくれるホテルはない。どのホテルも、私たちが(ロシア軍の)標的にされていると聞いているからだ」と述べた。

「これまでに私たちが滞在した3つのホテルがミサイル攻撃を受けた」とミルバーンは言う。無作為の攻撃だった可能性もあるが、3つのうちの1つのホテルは、ミルバーンらがチェックアウトした翌日に攻撃を受けたという。「私たちが標的だった可能性も間違いなくある。人道支援を主とした組織に対して大した力の入れようだが」

さらに「どんな脅しや讒言が飛び交っても、活動は続ける」と付け加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中