最新記事

人権問題

国連人権高等弁務官のウイグル視察報告、中国が公表差し止めに各国へ働きかけ

2022年7月20日(水)12時32分
バチェレ国連人権高等弁務官

中国政府は、バチェレ国連人権高等弁務官(写真)が5月に行った新疆ウイグル自治区の視察に関する報告書を公表しないよう働きかけている。中国側が各国にこうした取り組みへの支持を要請する書簡を送ったことをロイターが突き止め、実際に3カ国の外交官が書簡を受け取ったことを認めた。6月13日、ジュネーブで撮影(2022年 ロイター/Denis Balibouse)

中国政府は、バチェレ国連人権高等弁務官が5月に行った新疆ウイグル自治区の視察に関する報告書を公表しないよう働きかけている。中国側が各国にこうした取り組みへの支持を要請する書簡を送ったことをロイターが突き止め、実際に3カ国の外交官が書簡を受け取ったことを認めた。

欧米の人権団体などはウイグル自治区で少数民族ウイグル族に対する強制労働などの人権侵害が起きていると主張、中国政府はこれを徹底的に否定している。そうした中でバチェレ氏がウイグル自治区を視察したが、中国への対応が甘すぎると批判を浴びた。その後バチェレ氏は8月末で退任する意向を示し、その前に視察報告を公表すると約束していた。

ただ3人の外交官らによると、中国政府は6月終盤からジュネーブの各国代表部に書簡を送付し、報告書が公表されることへの「重大な懸念」を表明。公表差し止めに向けて各国に支持の署名を要望しているという。

書簡には「(新疆の)視察結果が公表されれば、人権分野で政治化と陣営間の対立に拍車がかかり、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の信頼性にひびが入るほか、OHCHRと加盟国の協力関係が損なわれる。われわれは高等弁務官に視察結果を公表しないよう強く求める」と記されている。

ジュネーブの中国代表部の報道官は、書簡が送付されたかどうか、あるいはそれがどんな内容かには言及しなかった。一方で報道官は100カ国近くが最近、新疆問題で中国への支持と人権という名の下に内政干渉が行われることへの反対を明らかにしたと強調した。

中国外務省の報道官はロイターに、新疆問題で中国のイメージを傷つけようとする一部の国のたくらみは成功しないと力説した。

バチェレ氏自身がこの書簡を受け取ったかどうかは不明。OHCHRの報道官は、この問題に関するコメントを拒否した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪ボンダイビーチ銃撃、容疑者親子の軍事訓練示す証拠

ビジネス

英BP、豪ウッドサイドCEOを次期トップに任命 現

ワールド

アルゼンチンの長期外貨建て格付け「CCC+」に引き

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米ハイテク株安受け半導体
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中