最新記事

アメリカ経済

債務上限引き上げなければアメリカは「破産」する──イエレン財務長官

Treasury Secretary Warns U.S. Default on Debt Will Trigger Interest Rate Rise, Recession

2021年9月29日(水)17時09分
レベッカ・クラッパー
イエレン米財務長官とパウエルFRB議長

議会で証言したイエレン財務長官(左)とパウエルFRB議長(9月28日) Kevin Dietsch-REUTERS

<アメリカは8月以降新規の借り入れができない状態にあり、10月18日までに債務上限が引き上げられなければ手元の資金を使い果たす公算が大きいという>

ジャネット・イエレン米財務長官は9月28日、10月18日までに連邦政府の債務上限が引き上げられなければ米政府は手元資金をやりくりする手段を失い、アメリカはデフォルト(債務不履行)に陥り、金利上昇と景気後退の引き金を引きかねないと警告した。

アメリカが債務不履行に陥った場合の状況についてイエレンは、「アメリカ合衆国に対する全幅の信頼と信用が損なわれ、金融危機や景気後退に直面する可能性が高い」と述べた。

景気後退に加えて、債務上限の引き上げの失敗も金利上昇圧力になり、アメリカ人の利支払いや、政府の国債の利払いに影響を与えるとイエレンは付け加えた。

一般のアメリカ人にとっては、「住宅ローンや自動車ローン、クレジットカードなどの利払いが増えるだろう」と、イエレンは言う。

以下はAP通信の報道だ。

イエレンはこの日、連邦上院銀行委員会の公聴会で証言を行った。この公聴会は、約1年半前に始まった新型コロナウイルスのパンデミックがアメリカ経済をまひ状態に追い込んだことを受けて連邦政府が実施した巨額の財政支援について、議会がその影響に関する最新情報を得るために開催された。

米国債の格付け下がる?

同じく公聴会で証言した米連邦準備理事会(FRB)議長のジェローム・パウエルも、債務上限の引き上げは「不可欠」であり、引き上げがかなわなかった場合の影響は「非常に厳しいものになるおそれがある」と警告した。

債務上限とは、連邦政府が借りられる金額に一定の制限を設けるもので、議会が債務を上回る額の支出を承認したのちには、必ず引き上げられなければならない。この上限は、1960年以降80回近く、引き上げないし一時停止されてきた。トランプ政権時代にも3回停止された実績がある。

公聴会とは別に、イエレンは9月28日、議会指導者たち宛に書簡を送付。債務上限の引き上げに関する議会内の攻防が長引けば、経済が危険にさらされるという見方を重ねて表明した。

「(上限の引き上げを)ギリギリまで引き延ばせば、事業者および消費者の信頼感に深刻な打撃を与え、納税者の借入コストを上昇させ、今後何年にもわたり、アメリカ合衆国の信用格付けにマイナスの影響を与えるおそれがある」

債務上限の引き上げに反対する上院財政委員会の共和党メンバーは、上下院で多数を占める民主党は単独で上限を引き上げかねないと非難を強める。

「民主党は、課税や支出、さらにはアメリカをヨーロッパ化するような規制の導入を企んでおり、共和党の歯止めが必要だ」と、共和党所属でルイジアナ州選出の上院議員ジョン・ケネディは主張した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米インフレ、目標に向け推移 労働市場は堅調=クーグ

ワールド

韓国大統領、戒厳令を解除へ 「国会の投票を尊重」

ビジネス

FRB利下げ、12月も排除せず 時期は柔軟に対応=

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、今後12カ月で金利は低下との見方
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「IQ(知能指数)が高い国」はど…
  • 6
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 7
    スーパー台風が連続襲来...フィリピンの苦難、被災者…
  • 8
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 9
    なぜジョージアでは「努力」という言葉がないのか?.…
  • 10
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 6
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 9
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 10
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中