最新記事

感染第2波

インドネシア、コロナ死者1万人突破 政府は打つ手なく迷走し医療崩壊の危機

2020年9月24日(木)21時25分
大塚智彦(PanAsiaNews)

新型コロナウイルスによる死者が1万人を突破したインドネシア。24日もまた新たな棺が墓地に運び込まれた。REUTERS/Willy Kurniawan

<感染抑止と経済対策の二兎を追った結果、ASEAN最悪の死者を記録>

インドネシアの新型コロナウイルスによる死者が9月24日1万人を超えた。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国で最悪の数字を更新し続ける事態に、ジョコ・ウィドド政権もあの手この手の感染拡大防止策を打ち出すものの、効果は弱く、感染者数も増加の一途をたどっており、「打つ手なし」というのが現状だ。

医師や看護師などの医療関係者の感染死も域内トップという状況に加えて感染者を収容する病床も間もなく不足するのは必至という状況で「医療崩壊」が現実の問題として迫っている。

首都ジャカルタの玄関口であるジャカルタ国際空港では、搭乗者のコロナ検査にあたる製薬会社関係者が被験者へのセクハラ容疑で逮捕されたり、保健衛生ルールの違反者の摘発が相次いだり、日系を含めた工場でのクラスター(集団感染)が次々と発覚し、一時操業停止処分を受けるなど、感染拡大に伴うモラルや規律遵守意識の低下も伝えられるなど、インドネシアはますますコロナ禍で迷走の度を深めている。

感染者、死者ともに急激な増加傾向

インドネシア保健当局は毎日夕方、オンライン会見で全34州の全国集計と各州の過去24時間の感染者数、死者数を公表している。

9月24日の発表では感染者数は26万2022人となり、ASEANではフィリピンの29万6755人に次いで2位となっている。死者数は1万105人とついに1万人を超え、域内2番目となるフィリピンの5127人を大きく上回っている。

感染者および死者は2カ月前の7月24日には95418人、4665人だったが、1か月後の8月24日には155412人(約6万人増)、6759人(約2000人増)だった。しかし8月24日からの1カ月で、感染者で約10万6000人、死者で約3300人と爆発的な感染増加が続いている。

こうした状況にも関わらずジャカルタ州政府は6月4日に緩和した「大規模社会制限(PSBB)」を元の厳しい制限に戻すことを躊躇し、ようやく9月14日に厳しい制限の再適用を期限2週間で発表、実施した。

それにも関わらず14日以降24日までの10日間で感染者は約35000人、死者は約1100人と増加し、歯止めはかかっていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、新たな対ロシア制裁発表 中国企業を狙い撃ち

ビジネス

米地銀NYCB、向こう2年の利益見通しが予想大幅に

ビジネス

FRBの政策金利決定、大統領選の影響受けない=パウ

ビジネス

ドル一時153円まで4円超下落、介入観測広がる 日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中