最新記事

コロナ危機後の世界経済

中国経済は本当に世界を「V字回復」へと導けるのか?

CAN CHINA LEAD THE RECOVERY?

2020年4月1日(水)17時15分
キース・ジョンソン

コロナの警戒レベルが引き下げられて街へ繰り出す人々は増えたが、上海ではまだマスク姿の人々が目立つ(3月23日) Aly Song-REUTERS

<コロナ禍が一段落して経済活動が復活――大幅成長が予想される中国の現状と欧米各国の今後の行方を読み解けば......本誌「コロナ危機後の世界経済」より>

中国が「通常営業」に戻り始めているようだ。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、国内各地で封鎖状態が始まってから約2カ月。重要な指標である電力需要や鉄鋼需要、自動車生産台数は、通常時と大差のないレベルまで回復しつつある。

20200407issue_cover200.jpg

ならば、パンデミック(世界的な大流行)の渦中にある欧米も4〜6月期に被る大打撃を乗り越えて、今年後半には経済回復を見込めるのか。

言い換えれば、こういうことだ。最悪の第2四半期を予測しつつも、 先行きを楽観視しているらしい大半の専門家の見方どおり、世界の経済大国は今も「V字回復」路線をたどっているのか。それとも、航空会社から飲食店まで全ての業界が完全閉鎖された今、これらの国々は「死」 を迎えようとしているのかーー。

とりわけアメリカの場合、この問いは重大な意味を持つ。新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるべく、限定的な外出制限を開始してからわずか数日後、ドナルド・トランプ米大統領は早期に正常化を図りたいとの意向を明らかにした。

トランプは3月24日、4月12日のイースター(復活祭)までに経済活動を通常どおりにしたいと発言。イースターは「素晴らしい時期」だから、との理由だ。

新型肺炎流行の出発点であり、それに伴う経済的混乱を最初にして最悪の形で味わった中国の現状は、今から数カ月後のアメリカの予想図と言えなくもない。

中国の国内活動は多くの点で通常に近い状態に戻り始めている。上海や北京では交通渋滞が復活し、大半 の主要都市の渋滞度も昨年の平均にじりじり迫る。金融大手ゴールドマン・サックスの指摘によれば、封鎖中に短期間ながら改善していた中国の大気汚染は、石炭火力発電所の操業再開で元どおりになり、鉄鋼などの重工業分野への需要は既に2018〜19年の水準に回復している。

中国の大手自動車メーカーの多くは生産を再開。住宅販売戸数は、いまだ近年の水準には届いていないものの、上向き始めている。

データを見る限り「かなり堅調に回復しているようだ」と語るのは、 国際金融研究所の主任エコノミスト、 ロビン・ブルックスだ。中国の1〜3月期のGDPは大幅縮小するが、 4〜6月期には「V字を描いて」回復すると、ブルックス率いるチームは予測。今年後半に入る頃には、成長再開へ向かう傾向を示すはずだ。

中国の現状は心強い材料だ。とはいえ、欧米各国の経済が今後6週間ほどで、無傷に近い状態に復活する と考えていいとは限らない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP30が閉幕、災害対策資金3倍に 脱化石燃料に

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中