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日本経済

災害後の復興増税が誤った選択肢である理由

THE RIGHT WAY TO FINANCE DISASTER RECOVERY

2019年11月16日(土)13時40分
浜田宏一(元内閣官房参与、米エール大学名誉教授)

ここにきて、主流派の経済学者も財政赤字を計上して歳出を増やすことに前向きになり始めたようだ。IMFのチーフエコノミストを務めたオリビエ・ブランシャールもこう述べている。「金利が極めて低く、公的債務について投資家から安全と判断されている国では......金融政策の限界を埋め合わせるために、財政赤字をさらに増やすことが必要なのかもしれない」

今の日本では特に、増税は避けたほうがいい。10月に消費税率が引き上げられたばかりだからだ。これまで安倍晋三首相は社会保障充実の重要性を強調してきた。消費増税による歳入増の半分は、幼児教育無償化など社会保障の拡充に回すという。

この点を考えると、復興財源を確保するための増税が近く実施されることはなさそうだ。安倍首相は財務省と異なり、経済の状況によっては――とりわけ経済が一時的なショックに襲われたときは――政府が支出を増やすべきだと理解している。

KOICHI_HAMADA_profile.jpg[著者]浜田宏一 KOICHI HAMADA
経済学博士、米エール大学名誉教授。内閣府経済社会総合研究所長などを経て、安倍内閣で情報提供や助言を行う内閣官房参与を務めた。近著に『21世紀の経済政策』(講談社刊)。

©2019 Project Syndicate

<本誌2019年11月19日号掲載>

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