最新記事

米軍

共通の敵を前にアメリカとギリシャが急接近

U.S. to Expand Military Presence in Greece

2018年9月5日(水)17時21分
クリスティナ・マザ

ホワイトハウスを歩くトランプとギリシャのアレクシス・ツィプラス首相(2017年10月)Joshua Robertsct- REUTER

<トルコやロシアとの関係悪化から、アメリカとギリシャの軍事協力が急速に進行中。ギリシャがトルコに代わる米軍の軍事拠点になるかもしれない>

アメリカとトルコとの関係が悪化するなか、米軍はギリシャにおける軍事プレゼンスの拡大をもくろんでいる。当局者によれば、アメリカのねらいは、ギリシャとの協力関係を利用して、中東主要地域への軍事的アクセスを向上させることだ。

「地理的な状況、そしてリビアとシリアで進行中の軍事行動、(トルコが位置する)地中海東部における軍事行動の可能性を考えると、ギリシャの地理的な位置と状況はかなり重要だ」と、ジョセフ・ダンフォード米統合参謀本部議長は言った。

ギリシャとの軍事的な関係を強化するというアメリカの決断には、進行中のシリアの内戦が大きな影響を与えている。シリア政府は現在、北西部イドリブ県の反政府勢力に対する攻撃の準備を進めており、トルコは9月7日、シリアの将来について、ロシア、イランと会談を行う。

アメリカはシリア情勢に関してもはや主役の座を退き、関係する国々に対する影響力を失っているが、それでも軍事介入が必要になった場合、すばやく対応するための方法を米軍は模索している、と専門家は見る。

ギリシャ軍基地で米軍ドローン

アメリカとギリシャの軍事協力は数カ月前から強化されている。今年5月、米軍はこれまで使用してきたアフリカの拠点が修理中で使えなくなったため、ドローン(無人機)をギリシャの基地に送った。ドローンは現在、エーゲ海に近いラリサ空軍基地に駐留している。軍用ドローンがEU加盟国を拠点に運用されるのは初めてだ。

その時点で、アメリカとギリシャの当局者は、両国が合同でさらに多くの軍事的な計画に着手する可能性があることを示唆していた。現在ギリシャ国内の米軍基地は一カ所だけだが、米軍は飛行やその他の共同訓練のために、ギリシャ軍の基地も使用することになるかもしれない。

アメリカとギリシャの軍事協力の強化は、トルコを脅かす可能性が高い。現在のところアメリカ、ギリシャともにトルコとは緊張した関係にある。

トルコとアメリカの関係は、トルコが2年近くスパイ容疑で拘束しているアメリカ人牧師アンドリュー・ブランソンの解放をめぐってここ数カ月、急速に悪化している。

外交関係の悪化とともに、トルコは経済問題でドナルド・トランプ大統領を非難し始めた。同盟国としてのトルコが信用できなくなったことから、アメリカ政府はトルコ南部のインジルリク空軍基地から、完全に撤収する可能性を示唆している。シリアでのIS(イスラム国)との戦いで米軍の戦略拠点だった基地だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、Xに1.4億ドル制裁金 デジタル法違反

ビジネス

ユーロ圏第3四半期GDP、前期比+0.3%に上方修

ワールド

米、欧州主導のNATO防衛に2027年の期限設定=

ビジネス

中国の航空大手、日本便キャンセル無料を来年3月まで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中