最新記事

非核化

日中韓首脳会談、北朝鮮の完全な非核化へ協力確認 圧力継続などでズレも

2018年5月9日(水)15時45分

5月9日、日中韓3カ国は午前、都内で2年半ぶりとなる首脳会談を開き、北朝鮮による核・弾道ミサイル開発の完全な破棄に向けて協力していくことで一致した。写真は都内で代表撮影(2018年 ロイター)

日中韓3カ国は9日、都内で2年半ぶりとなる首脳会談を開いた。3首脳は北朝鮮の非核化へ向け協力していくことを確認したものの、安倍晋三首相が訴える圧力路線の継続を含め、完全に認識が一致したかどうかは不透明感が残った。

会談には安倍晋三首相、中国の李克強首相、韓国の文在寅大統領が出席した。2年半ぶりとなる今回の日中韓首脳会談は、4月下旬の南北首脳会談の直後かつ、米朝首脳会談を控える時期に当たった。

3首脳は1時間半の会談の多くを北朝鮮問題に割き、核・弾道ミサイル開発計画を完全で検証可能な、不可逆的な方法で廃棄するため、安保理決議に従って具体的な協力を進めることで一致した。安倍首相は会談後の記者発表で、「累次の安保理決議を完全に履行する。日中韓3カ国の共通の立場である」と強調。「諸課題の解決に向け、今後とも3カ国で協調して行動していく」と語った。

安倍首相はかねてから、北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動を取るまでは圧力をかけ続けると訴えてきた。一方で、韓国と中国は今年に入って北朝鮮との対話を始めており、対応にズレがみられ始めている。

記者発表で中国の李首相は「中国は終始、建設的な役割を果たしたい」と発言。韓国の文大統領は「朝鮮半島の非核化と恒久的な平和の定着、南北関係の改善が半島のみならず地域の平和に重要であるとの認識をともにした」と述べ、両首脳から北への厳しい言葉は聞かれなかった。

会談に同席した西村康稔官房副長官は、圧力路線について3首脳は認識を共有したかどうか報道陣から繰り返し問われ、制裁を義務付けた国連安保理決議に従うことで一致したとだけ回答。「具体的なやり取りは控える」とした。

日本人拉致問題については安倍首相が解決に向け協力を呼びかけ、李首相と文大統領の理解を得た。李首相は、日朝首脳会談の開催に期待を表明した。李首相は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による7─8日の中国再訪についても日韓首脳に説明した。

米国が保護主義色を強める中、3首脳は自由貿易体制を維持することの重要性についても議論した。日中韓の自由貿易協定(FTA)、東南アジア諸国なども含めた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉を加速することで一致した。東アジア全域を視野に3カ国でインフラ建設の協力をしていくことも申し合わせた。

(久保信博)

[東京 9日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金価格、最高値更新続く 米利下げ観測などで銀も追随

ビジネス

ソフトバンク株がプラス転換、PayPayが12月に

ワールド

インドとカナダ、関係改善へ新ロードマップで合意

ワールド

仏、来年予算300億ユーロ超削減へ 財政赤字対GD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中