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小惑星探査機「はやぶさ2」、いよいよ目的地の小惑星に到着へ

2018年4月23日(月)15時00分
鳥嶋真也

さらに、リュウグウに着陸し、石や砂を採取する際には、運用は複雑になる上に、時間も限られている。また探査機との通信には20分のタイムラグが生じるので、探査機にトラブルが発生した際の対応も難しい。もし対応を誤れば探査機が壊れてしまうかもしれない。

そこで運用チームは昨年から、想定されるリュウグウの形状をもとに、着陸場所を決めたり、着陸や石や砂を採取などの運用をシミュレーションしたりといった訓練を繰り返し実施。運用に慣れるだけでなく、運用に使うソフトウェアを改良したり、さらになんらかの異常事態が発生したときにどう対応するかを確認したりといったことを行ってきた。

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「はやぶさ2」のリュウグウ到着に向け、訓練を行う運用チーム (C) JAXA

「訓練の数をこなし、自信をつけてきている」

「はやぶさ2」のプロジェクト・マネージャーを務める津田雄一氏は「リュウグウ到着まで7割ほどの運用が終わった。しかしここからが重要で、慎重に残りの3割を進めていきたい」と、決意を語った。

また、訓練については「数をこなし、自信をつけてきている。実際の運用でも想定外のことが起こりうるだろうが、訓練をこなしたことで対応できると思う」と自信を見せた。

訓練を担当するJAXAの佐伯孝尚氏によると、訓練の中では困難なこと、対応が間に合わなかったこともあったという。ただ、「良質な失敗の経験を積むことが、手順書の成熟と運用メンバーの自信につながっている」と、運用チームの成長に期待を寄せる。

いよいよ間近に迫った「はやぶさ2」のリュウグウ到着。しかし、これからが本番。訓練で味わったようなトラブルはもちろん、想定外の困難も待ち受けているかもしれない。だが、それを乗り越えた先に、人類がまだ見たことのない未知の世界が待っている。

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「はやぶさ2」が2月に撮影したリュウグウ。今はまだ点でしかないが、これから徐々に鮮明になっていく (C) JAXA

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会

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